研究課題/領域番号 |
24656192
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
金澤 誠司 大分大学, 工学部, 准教授 (70224574)
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研究分担者 |
市來 龍大 大分大学, 工学部, 助教 (00454439)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 活性酸素 / プラズマジェット / 植物 / イロイヌナズナ |
研究概要 |
本研究では、筆者らが開発した大気圧放電プラズマを用いて、そのプラズマ中の活性酸素(ヒドロキシラジカルOH・、スーパーオキシドO2-など)を植物栽培過程に導入するための新規な手法を開発し、その効果(生育速度や収穫の増加など)を明らかにすることにある。研究初年度の対象としては、植物のなかでも全ゲノム配列が解読され、モデル植物とされているシロイヌナズナを用いた。 研究1年目では、植え付け前の種子にプラズマを照射して、その後の発芽や生育について調べた。プラズマ源としては大気圧プラズマジェットを用いた。固体ごとに差が出るため、t検定で統計的有意差があるかを評価基準にした。実験では、最初、単にプラズマを照射した種子と未照射の種子を植え付けてその後の発芽、生長の様子を観察した。評価として発芽後2週間、4週間の葉面積を計測した。その結果、この処理では優位な差は見られなかった。次に、春化処理を導入した。これは植物が低温状態に一定期間晒されることにより、開花能力が誘導されて花芽形成が促進される現象である。春化処理を施した発芽前の種子にプラズマ照射を行い、未処理のものと比較した。その結果、春化処理後の種子にプラズマ照射することで生長の促進が見られた。t検定による有意水準から判断しても有意差ありとなった。一方、光合成を促進させるために、発芽後にプラズマ照射した場合は、枯れさせてしまう結果となった。プラズマ照射条件の詳細な調査が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物を栽培する上で必要となる環境(光、温度・湿度)と生育条件(水、養分、土壌)を調えて、人工栽培できる実験設備を構築した。大気圧放電プラズマについては、放電の安定性や操作性から大気圧ヘリウムプラズマジェットを採用し、種子に常に一定条件で照射できる装置が完成できた。特に、春化処理とプラズマ照射を組み合わせる新しい手法を見つけ、発芽後の生長促進への有効性が示された。さらに、枝葉が生長中の試料に対して、光合成の度合いを評価するためのクロロフィル蛍光を観測できる独自の装置を試作し、評価に使用できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナの栽培において春化処理とプラズマ照射により発芽や生長促進の効果が発見された。しかしながら、プラズマの照射強度や照射時間の最適化はされていない。また、大気圧プラズマジェットの場合には、ジェット中心から半径方向に対して原子・分子・ラジカルの分布が変化し、どこの部分のプラズマを使用するかでも結果が違ってくることが予想される。このような照射条件に対する効果の発現を明らかにする必要がある。種子表面への照射では、種子の種皮のセルロースをプラズマが分解していることも考えられるため、種子断面についてその状態を観察する。 さらに、シロイヌナズナ以外の植物についても取り組みを開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の中心となるものは植物の栽培である。試験環境の整備が必要である。人工気象器は研究初年度に整備したが、その内部の湿度や光環境をさらに制御するための装置を追加する必要がある。 さらに取り組む植物の品種を増やすため、そのための消耗品として、植物の種子、培養土、プランターやシャーレおよびプラズマ発生用のガスが必要不可欠である。 プラズマによる植物成長促進の成果が出始めている。得られた成果を広く公表するため国内の学会と外国で開催される国際会議で発表するための出張を予定している。 シロイヌナズナの生育期間は約2ヶ月間と早く、多くの種子が収穫できた。また、人工気象器での栽培は半自動的にできる。このような理由で、当初予定していた種子の購入代金や実験補助の謝金が節約できたため、未使用額が発生した。次年度の照明機材等の購入に充てることにした。
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