研究課題/領域番号 |
24656192
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
金澤 誠司 大分大学, 工学部, 教授 (70224574)
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研究分担者 |
市來 龍大 大分大学, 工学部, 助教 (00454439)
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キーワード | 活性酸素 / プラズマジェット / 植物 / シロイヌナズナ / カイワレ大根 / グルコース |
研究概要 |
本研究では、大気圧放電プラズマを用いて、そのプラズマ中の活性酸素を植物の栽培過程に導入するための新規な手法を開発して、その効果(生育速度や収穫の増減など)を明らかにすることにある。植物照射用の大気圧プラズマジェットを開発し、人工気象器による植物栽培の実験システムを構築した。 研究ではモデル植物とされるシロイヌナズナや種子が大きくて生育期間の短いカイワレ大根を用いた。シロイヌナズナの実験では、種子に春化処理とプラズマ照射を組み合わせることで発芽後の生長促進が現れることを示した。カイワレ大根の場合には、前処理として水浸漬後にプラズマ照射すると生長に対して促進効果が得られた。これらの効果は、コントロールの試料と前処理とプラズマ照射を併用した試料の比較をt検定で調べることで、統計的有意差があることにより実証された。 さらに植物の種子には発芽の際に貯蔵物質であるデンプンが分解されてグルコースを生成する過程があることから、種子中のグルコース濃度の測定も行った。その結果、前処理とプラズマ照射を併用した場合において、グルコース濃度の増加が見られ、プラズマが種子中のデンプン分解酵素の活性化や直接的作用による種子内の機能発現が示唆された。 一方、発芽後にプラズマ照射した場合には、植物を枯れさせる作用が顕著に現れ、雑草等の駆除に有効利用できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物の種子に前処理とプラズマ照射を組み合わせる手法を適用することで発芽後の生長促進が可能になることを発見し、シロイヌナズナやカイワレ大根においてその効果を実証した。そのメカニズムとして、これらの処理が植物の種子に含まれるデンプン分解酵素を活性化してグルコースを生成する過程やプラズマ中の活性酸素が直接的に作用してグルコース生成を促進していることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
植物の種子や発芽後の枝葉にプラズマ照射を行うことで生長の促進や枯死がおきることがわかった。しかし、プラズマの照射条件については最適化されていない。ラジカルの分布や種類についても調べる必要がある。さらに、プランターにプラズマ照射部を組み込んだ装置を作製し、栽培条件を整備することで新規な植物の人工栽培装置を提案して、次の研究へと発展させていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験で使用した植物であるシロイヌナズナは生育期間が約2ヶ月と早く、多くの種子が収穫できた。実験装置として市販のプランターを使用した。このような理由で、当初予定していた種子の購入代金や装置にかかる経費が節約できたため、次年度使用額が発生した。 研究最終年度では、プラズマを植物栽培用のリアクタに組み込んだ装置を提案する。そのための装置作製には3Dプリンタを使用することを予定している。3Dプリンタの部品の購入費や材料代として使用する。
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