研究課題/領域番号 |
24656197
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
遠藤 恭 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50335379)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高周波計測 / ナノスピン / プローブ顕微鏡 / MFM用探針 / 場のうなり |
研究概要 |
本研究課題では、局所領域でのスピンの高周波磁界応答を評価できる新規「高周波ナノスピン計測技術」の構築(空間分解能:20 nm以下、測定帯域:10 kHz~40 GHz、外部磁界:最大5.0 kOe、高周波磁界振幅:最大0.5 kOe)を目指して以下の通り検討した。 本年度は、この新規計測技術として高周波磁界ビート方式による磁気力顕微鏡の原理の提案とその確認を行った。原理に関しては、周波数帯のわずかに異なる伝送線路とコイルにおいて場のうなり(beating field)を発生させると、高周波近傍磁界をMFM用探針により検出できることを予測した。また、伝送線路とコイルの代わりに、周波数帯のわずかに異なる2つの正弦波信号を同時にコプレーナ伝送線路(CPW)へ入力してbeating fieldを発生させる擬似モデルでは、高周波近傍磁界だけでなく、近傍電界もMFM用探針により検出する可能性を示した。次に、これらの予測を元にして本計測技術に関して原理の検証を行った。まず上記に示した擬似モデル(2つの交流電圧を同時にCPWへ入力)を用いて(beating field)を発生させてCPW上の近傍電磁界の検出を軟磁気特性を有するNi-Fe膜をコートしたMFM用探針とSi探針で試みたころ、いずれの場合も10 GHzまで検探針の振動振幅を検出することに成功した。また、MFM用探針の振動振幅の値は、Si探針に比べて大きくなっている。この結果は,近傍電界だけではなく近傍磁界を検出していることを示している。 以上の結果から、本計測技術では測定対象となる伝送線路上でbeating fieldを発生させることによる近傍磁界の検出原理を提案し、実験により伝送線路上に周波数帯のわずかに異なる2つの正弦波信号を入力することにより、Ni-FeコートしたMFM用探針で近傍電磁界を検出できることを明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計測技術の原理とその検証を行い、本計測技術では擬似モデルである伝送線路に2つの交流信号を入力した場合に、他の高周波磁気力顕微鏡(振幅変調型や周波数変調型MFM)と同様に、カンチレバーに与える電界効果が問題であるものの、近傍電界と磁界によりMFM用探針が振動することを初めて検証出来ることを示した。また、本計測技術における検出周波数帯域を、MHz帯域からGHz帯域まで伸ばすことができた。これらの点から、基本原理を抑えることができたので、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本計測技術においても、他の高周波磁気力顕微鏡と同じように、カンチレバーに与える電界効果が大きくなると、伝送線路上の近傍電界を主に検出することとなる。したがって、擬似モデルによる実験では、電界効果を抑制する方法を、本計測技術に組み込んで、伝送線路上の近傍磁界のみを検出することを確認する。また、議事モデルから得られた知見を活かして、コイルと伝送線路との間で場のうなり(beating field)を発生させて、MFM用探針により伝送線路上のGHz帯での近傍磁界を検出できることを示していく。その上で、検出感動等を含めて検討した上で微小磁性体のスピンの高周波応答検出の可能性を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に消耗品費としてナノスピン計測用部品、MFM用探針にコートする磁性薄膜材料、GHz帯での計測を行うための高周波プローブとケーブルといった高周波計測用部品、測定対象となる伝送線路およびMFM用探針の直上に設置するコイル部品に使用する計画である。また、基礎データが出てきている段階なので、研究成果として外部発表を行うためや論文投稿の費用にあてる計画である。
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