研究課題/領域番号 |
24656199
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
串田 正人 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70177989)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 垂直配向カーボンナノチューブ / 金属ナノ粒子 / 触媒 / ラングミュアーブロジェット膜 / 燃料電池 / 分子エレクトロニクス / 近接場光学 / 機能性有機超薄膜 |
研究概要 |
[内容] (1)LB膜触媒担持によるVA-CNT本数密度成長制御を(a)LB膜成長触媒微粒子のLB膜作製,(b)フィラー(邪魔)分子混合によるVA-CNT成長本数密度制御,(c)コア(成長触媒金属微粒子)-シェル(シリカ被覆膜)型微粒子のLB膜担持よるVA-CNT成長本数密度制御を行った。また,作製したLB膜の物理化学的な性質(配向性等)を近接場光による全反射減衰測定を用いて解析を行なった。 革新的応用開拓の二つ目として,(2)燃料電池電極VA-CNTのアイオノマー塗布工程へのLB法の適応を以下の手順で行なった。(d)アイオノマー高分子のLB膜化,(e)LB膜のVA-CNTへの含浸方法の開拓,(f)1cm^2燃料電池性能評価を行った。 [意義] 燃料電池電極に使われる白金触媒担持量の削減のためにVA-CNTを白金担持体として用いるにはCNTの垂直配向化と本数密度および太さ制御が必要である。本研究のLB法によるVA-CNT成長触媒累積膜はCNTの本数と太さを独立に制御可能であり、燃料電池性能評価には欠かせない技術である。また、固体電解質としてのアイオノマーのVA-CNT含浸技術を開発することは燃料電池性能を大きく左右するものである。今回金属触媒累積がLB法で達成されつつあり、アイオノマーのVA-CNTへの含浸技術を開発する意義は大きいと考える。 [重要性] 燃料電池性能を向上させるためにVA-CNTの本数密度、直径制御を行うことは必要であるが、従来のVA-CNT成長触媒担持法であるスパッタ法や真空蒸着法は独立制御が困難であった。LB法は触媒ナノ粒子をナノ粒子の状態で直接基板に担持できるので、簡便にしかも均一に触媒を配列制御できる。したがって今回開発しているLB法による触媒ナノ粒子担持は燃料電池性能向上のためにきわめて重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,革新的なLB法応用の開拓のひとつとして,(1)LB膜触媒担持によるVA-CNT本数密度成長制御を(a)LB膜成長触媒微粒子のLB膜作製,(b)フィラー(邪魔)分子混合によるVA-CNT成長本数密度制御,(c)コア(成長触媒金属微粒子)-シェル(シリカ被覆膜)型微粒子のLB膜担持よるVA-CNT成長本数密度制御の順に行う計画で進捗状況は以下の通りである。 (a)金属ナノ粒子のLB膜化はほぼ達成できた。(b)フィラー分子混合LB膜は脂肪酸を混合した高密度ではほぼ達成できた。脂肪酸を用いた低密度ではCNTが垂直配向しないものがあり分子の探索が必要である。シリカゲルをもちいた場合、CNTは垂直配向するものの本数密度制御はまだ十分に行えていない。(c)コアシェル型微粒子を用いた場合にCNTが垂直配向するものがわかった。しかし、CNT本数密度制御のためにはさらにシェル層の構造制御が必要であることがわかってきた。 革新的応用開拓の二つ目として,(2)燃料電池電極VA-CNTのアイオノマー塗布工程へのLB法の適応を以下の手順で行う。(d)アイオノマー高分子のLB膜化,(e)LB膜のVA-CNTへの含浸方法の開拓,(f)1cm^2燃料電池性能評価の順で行う計画で進捗状況は以下の通りである。 (d)アイオノマー高分子のLB膜化に成功した。さらに均一なLB膜を作るための最適な累積条件の探索が必要である。(e)VA-CNTとアイオノマーの親和性と溶媒によるVA-CNTのバンドル化のために含浸は現段階で困難であり、さらなる検討が必要である。(f)燃料電池性能評価のために1cm2程度の試料作製に成功した。さらなる大面積化のためにLB膜装置の改良を検討中である。 一部研究計画の進展に遅れの見られるものもあったが、以上の理由により当初の研究目的はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
[今後の方針] 1.フィラー分子混合LB膜を用いてVA-CNT成長用触媒の金属ナノ粒子の熱凝集を防ぎ、個数密度を制御するために、フィラー分子の探索を行う。具体的には炭素鎖の異なる脂肪酸を用いることで、LB膜分子の配向制御を検討する。また熱凝集を防ぐためにシリカナノ粒子などの耐熱性ナノ粒子を探索する。 2.これまでの前駆的な研究において,金属触媒微粒子をコアに,シリカ被覆膜を外皮シェルとするコアシェル粒子の作成とそのVA-CNT成長を試みている。この手法によれば,コア粒径を同じまま,外皮のシェル膜厚を制御することで触媒配置間隔を自由に制御できると考えた。しかしながら,フッ酸のエッチング工程においてエッチングを停止することが極めて困難であり,本研究の中では難易度は高いだろうとの予測を得ている。今後,ドライエッチングの手法も試みる予定である。基板への担持方法はLB法に必ずしも限定されることはなく,SiO2基板とSiO2シェルを持つ微粒子は親和性が高く,半ば自己組織的に融着することも期待できる。このメカニズムについて,考察することでCNT成長に関する新たな知見を得ることが期待される。 3.また、新たにシェル層の構造を制御することにより、VA-CNTの成長過程での加熱によってコアの金属触媒ナノ粒子がシェル表面に移動する特異な現象が確認された。すなわち上記2.の手法によらない全く新たな発想でコアの金属ナノ粒子の触媒活性を得られる可能性が出てきた。この手法を使えばフッ酸などの環境負荷の高い試薬を使うことなく、また、熱CVDと同時にコアの触媒金属がシェル表面に移動するので簡便にしかも短時間でVA-CNTを成長させることができると考えている。 4.前年度に引き続きアイオノマー高分子の親和性を考慮してVA-CNT含浸を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.金属ナノ粒子の配向配列制御を評価するために近接場光による全反射減衰測定法を用いることが有用であるが、微小な反射光測定にはロックインアンプ(500千円)を用いた電気信号の増幅が必要である。 2.コアシェルナノ粒子は触媒金属の熱凝集や個数密度制御に有用である。VA-CNTを成長させるためには触媒となるコアの金属触媒がシェル層を何らかの方法で移動またはシェル層自体を除去する必要がある。そのためにシェル層の作製が重要となる。そのためのテトラエトキシシラン、フィラー分子として用いるパルミチン酸等の高純度試薬(100千円)が必要とである。 3.金属ナノ粒子は市販のものと自作のものを使う予定(300千円)である。 4.CNT成長ガスとして高純度アセチレン、高純度水素、高純度アルゴン等を購入予定(100千円)である。 5.その他として研究成果発表のための学会参加(EM-NANO2013国際会議、応用物理学会)、論文発表等の経費(100千円)が必要である。
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