研究課題/領域番号 |
24656202
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
波多野 睦子 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00417007)
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研究分担者 |
岩崎 孝之 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80454031)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | グラフェン |
研究概要 |
本研究は、省エネルギースイッチングデバイスをターゲットとして、新規な2次元カーボン膜であるフッ化グラフェン膜を創製、その特異なキャリア輸送機構と制御性を解明し、高速性と低消費電力性を両立するデバイスの実現を目的とする。24年度はデバイスを実現するための下記の要素技術を構築した。さらに当初の計画を前倒しにして、デバイス構造を提案し、試作評価を行った。 (1) 制御性が高いフッ化グラフェンの作製プロセスの構築:Ar/F2プラズマ中で高活性なフッ素ラジカルに晒すことにより、フッ素を吸着させるプロセスを開発した。フッ化率はフッ素ラジカルに晒す時間により制御することができ、最大で約25%までフッ化できること示した(本結果はAPLに掲載) (2) 膜の構造解析:ラマンスペクトルの変化は顕著に見られ、フッ化に起因するDピークが強まっていることがわかった。またXPSによりC-F結合状態を評価し、フッ化率を求めることができた。らに、Ar雰囲気で300℃で30分のアニール処理を行うことにより、フッ素を脱離させることができ、膜の構造はグラフェンの特性に戻ることを確認した。 (3) デバイスの試作とキャリ輸送特性の評価:グラフェンに部分的にフッ素原子を付加した膜をチャネルとし、バックゲート(Si/SiO2)構造のデバイスを試作した。その結果、電気抵抗はグラフェンと比較すると最大2桁以上増大し、ゲート電圧により局在(絶縁体的)-非局在(金属的)転移が起こることがわかった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度の目的としていたフッ化グラフェンの作製、構造解析の研究は早期に実現した。このため、25年度実施計画のデバイス構造の提案と試作、輸送特性の評価とデバイス化までを前倒しにして行った。
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今後の研究の推進方策 |
高速性と低消費電力性を両立するデバイスの実現を目的として下記を推進する。 (1)キャリア輸送特性の解明 フッ化グラフェンへのキャリア注入および輸送特性評価は、電界効果トランジスタ構造により行い、キャリア注入による電子構造転移を検証する。このためフッ化前に高濃度ドープSi基板をバックゲートとしたグラフェントランジスタ構造を作製し、輸送特性(AIST温度変化、磁場による変化)を評価する。 (2)イオン液体を用いた電界制御構造と系の構築 ゲート絶縁膜としてイオン液体を用いることいより、高効率なキャリア注入を行い、低消費電力デバイスの実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は予算を効率的に使ったため残高が生じた。この未使用分は平成25年度の計画のために使用する。 (1)物品費: 高精度デバイス評価用治具 98万円 デバイス設計用ソフトウエア 56万円 (2)消耗品:デバイスの試作、分析 40万円 (3)旅費:国内外学会発表 47万円 (4)謝金: 10万円
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