研究課題/領域番号 |
24656206
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大森 裕 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50223970)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機導体 / 分子性固体 / 電子・電気材料 / 有機電子光素子 / 有機発光素子 / 金属ナノ粒子 / 溶液プロセス / 有機界面 |
研究概要 |
作製プロセスが簡易な印刷プロセスでエレクトロニクス素子を作製することは将来のデバイスに魅力ある技術である.本研究の目的は電極をも含めて印刷プロセスで素子作製を行う基盤技術を確立することにある.本年度は主として,電極として金属ナノインクを用い,電極からの効率のよい電子注入を実現するための検討を行った.すなわち陰極-有機半導体層界面に着目して,印刷プロセスで作成された電極からの電子注入プロセスの検討を行った.その主な検討結果を下記に記します. 1.電極-有機界面の検討:金属ナノインクを用いた電極構成では,ナノインクを焼成する際の加熱プロセスで金属ナノ粒子が有機層中に熱拡散することが判明し,金属ナノ粒子が拡散しない有機層の挿入が必要となる.フッ素含有ポリマー材料を用いて,銀ナノ粒子の拡散を防ぐことを検討した.このような有機薄膜を挿入する事により電子トラップが界面に形成され,結果として電子注入が十分に行われない事が判明した.この事を防ぐために,積層構造の有機薄膜の形成,有機単分子膜の挿入などを行い,有機単分子膜の挿入により電子注入が十分の向上が図られることが明らかになった.具体的には発光トランジスタなどの発光素子を作製し,電子注入と正孔注入の過程について検討を行い,電子-正孔の両キャリアが注入できる電極構成を実現した. 2.可溶性炭素化合物による電極形成:可溶性のフラーレン誘導体,グラフェンなどの炭素材料からの電子の注入過程について発光トランジスタなどの素子を作製し,電子注入と正孔中の両キャリアの注入過程について検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は印刷技術による電極形成方法について検討を行い,効率よく陰極からの電子注入を行うための基礎的な検討を行った. 有機デバイスとしては,電流注入過程を評価するためのデバイスとして有機発光トランジスタを溶液プロセスで作製した.電極として銀ナノ粒子を溶液プロセスで形成し,パターン化の手段としてフッ素含有ポリマーの表面を紫外線で改質する方法でフォトリソグラフィーによるパターン化を試みた.フッ素含有ポリマーをフォトレジストと見立て,紫外線照射により良好なパターン形成を行うことは可能であることは見出したが,紫外線照射による有機導電性薄膜が改質され電気伝導に影響を与える事が判明した. この問題を解決するための有機薄膜界面での電子トラップの形成されない薄膜構成と電極形成について検討を行い,紫外線照射の影響の少ない有機導電薄膜を用いる事により,良好な電子注入と正孔注入が行われる事を確認した.有機発光トランジスタにおいて電子注入と正孔注入がバランス良く行われる素子構成により,電極形成も含めた溶液プロセスによるデバイス作製を達成出来た.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成25年度は,可溶性電極材料の種類を拡大し,今まで検討していた銀ナノ粒子、可溶性炭素化合物などに加え、導電性有機材料との複合化を検討する.また,電極材料のみならず電子注入過程を検討するために電子・光デバイスの作製を行う. 電子注入過程を評価するためのデバイスとしては、有機発光トランジスタを中心に,有機ELや有機トランジスタの作製を行う.特に有機発光トランジスタはキャリア注入過程を発光現象として捉える事が可能で,電極からのキャリア注入過程と,有機半導体内部でのキャリア輸送機構の解明を同時に解析する事が出来る.キャリア注入の改善のために,電極界面や有機層界面に単分子膜を挿入することによるキャリア注入機構の改善の検討を行う. 印刷プロセスで形成された電極によりキャリア注入過程の評価,特に電子注入過程の評価手段として,発光デバイスを作製して発光特性を解析する事から電子注入と正孔注入のバランスの評価を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
可溶性電極材料として,銀ナノ粒子、可溶性炭素化合物などの電極形成材料の購入,有機電子・光デバイス作製のための有機導電性材料の購入,電極界面と有機層界面に挿入する単分子膜形成材料の購入,有機デバイス作製の際に用いる高純度ガスおよび有機溶媒の購入,などの物品の購入を計画する. 研究成果発表のための国内学会発表、海外で開催される国際会議発表等に会議に参加するための旅費,およびその参加費への支出,などの旅費などへの支出を予定する。 研究成果をまとめた英文誌への論文投稿のための論文掲載料,および英文添削料などへの支出を計画する.
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