研究概要 |
作製プロセスが簡易な印刷プロセスで大面積のエレクトロニクス素子を作製することは将来のデバイス作製技術として期待される.本年度は主にオール印刷プロセスで作製した素子において電極界面に種々の薄膜を挿入することにより,陰極からの効率のよい電子注入を実現するための検討を行った.その主な検討結果を下記に記します. 1. 薄膜挿入層による高効率な電子注入:電極から有機導電性層への電子注入の向上を目指して炭酸セシゥム薄膜や高分子電解質薄膜を銀電極界面へスピンコート法により形成した.その結果,炭酸セシウムとフルオレン系共役高分子電解質の混合薄膜をポリアルキルフルオレン系発光層 Poly(9,9-dioctylfluorene-co-benzothiadiazole)(F8BT) との界面に挿入した発光素子において電子注入が向上した.その結果,発光輝度80,000cd/m2,発光効率10cd/A以上の高効率な発光素子を実現した. 2.カーボンナノチューブ電極を用いた電極構成:トランジスタ構造の両極性導電性層をもつ発光素子に電子と正孔の両キャリアを効率よくに注入することにより導電性層の禁止帯のエネルギー幅に対応した発光が得られる.本研究では,ソース・ドレイン電極に多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いたプリンテッド有機発光トランジスタ(OLET)を作製しその特性を評価した.有機導電層には,ポリアルキルフルオレン系材料(F8BT)を用いた.有機層の成膜には,固体薄膜を転写して成膜するコンタクトプリント法(CP法)を用いた.絶縁層としてポリメチルメタクリレート(PMMA)をスピンコート法により成膜し,ゲート電極にはMWCNTを接着した.トランジスタ構造の素子は高い移動度,低い閾値電圧を示し,キャリア注入の改善が示唆された.その原因にはMWCNTが有機層と相互浸透したネットワークを形成して接触面積が向上したことが考えられる.この事により,MWCNTを用いたプリンテッド有機発光トランジスタを実現した.
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