研究概要 |
電磁波を吸収する電磁波吸収体は,無線LAN等の通信障害対策,レーダ対策,電波暗室用途,携帯電話等電子機器内のノイズ対策等において,幅広く利用されている電波利用には不可欠な電子材料である.電波と光波の境界領域の周波数にあたるテラヘルツ波は,その高周波特性を活かした超高速無線通信や物質固有の吸収スペクトルの検知・適度な透過性を利用したセンサ・イメージングなどの研究が進行しており,様々な応用へ向けてコンパクトなテラヘルツ波吸収体の実現が大いに期待されている. 本研究では,研究代表者が世界に先駆けて実証してきた微細構造フォトニック結晶による発光制御法を応用し,フォトニック結晶を用いたテラヘルツ波吸収体を実現することを目的としている. 本研究の目的であるフォトニック結晶テラヘルツ波吸収体の実現へ向けて,1.フォトニック結晶によるテラヘルツ波の捕獲,2.テラヘルツ波とフォトニック結晶との相互作用による吸収,というプロセスが必要である.昨年度には上記のプロセス1,2に関する原理実証に成功した. 本年度は,フォトニック結晶の孔径および深さを調整することで,テラヘルツ波を捕獲可能にするモードの動作帯域を広げることを試みた.このフォトニック結晶に対して,シリコンのキャリア密度を様々に変化させた際の吸収スペクトルの系統的な解析を行い,最適なキャリア密度条件を見いだした.さらにフォトニック結晶に反射鏡を導入することで,反射鏡に由来するモードを導入が導入され,動作帯域をさらに広げることが可能になった.得られたキャリア密度に相当するシリコンウエハを準備し,設計したサンプルの試作を行った.その吸収スペクトルを評価したところ,0.3 THz帯において,最大吸収率99%, 90%吸収帯域が50 GHz(中心周波数の17%)という広帯域なテラヘルツ波吸収体を厚さ200ミクロンの薄膜構造にて,実現することに成功した.
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