研究課題/領域番号 |
24656211
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
都甲 潔 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (50136529)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 計測工学 / 分子認識 |
研究概要 |
本研究は,医薬品やサプリメントの主成分として用いられる分岐鎖アミノ酸 (BCAA)を対象とし,その苦味の客観評価を可能とする苦味センサの開発を目的としている.我々の身近に存在する食品の多くにはアミノ酸が含まれており,アミノ酸は単体で様々な味を呈する.本研究が実現出来れば,肝硬変患者への経口投与剤や,筋肉疲労を防ぐためのスポーツ用サプリメント飲料等の味質の評価,改善への応用のみならず,既に実現した味覚センサを併用する事で基本5味+渋味,アミノ酸を含む食品全般への適応が可能となる.本センサの開発課題として,以下の3課題についてそれぞれ実施した. ① BCAAを選択的に認識する脂質高分子膜組成の決定:BCAAである,バリン,ロシン,イソロイシンを対象として,苦味センサの受容部である脂質高分子膜の組成の検討を行った.これらのBCAAが疎水性アミノ酸である事に着目し,脂質として,phosphoric acid di-n-decyl ester,可塑剤として,bis(1-butylpentyl) adipateとtributyl o-acetylcitrateを含有したポリ塩化ビニル膜を用いる事でBCAAの検出が可能であることが明らかとなった. ② BCAAの官能検査:塩酸キニーネを苦味標準物質として用い,等価濃度試験法により,BCAAの官能検査を実施した.被験者の苦味官能値と苦味センサの出力値は,すべてのBCAAにおいて高い相関関係を有する事が明らかとなった. ③苦味抑制効果の検出:BCAAの苦味抑制剤として知られているアルギニン,オルニチンをBCAA混合溶液に添加し,苦味センサによる測定と官能検査を行った.センサ応答は,官能評価よりも低い抑制剤添加濃度から顕著な抑制の傾向が見られた.従って,官能検査が困難な薬品の苦味評価を苦味センサで代替できる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請課題は,2年間で①BCAAを選択的に認識する脂質高分子膜組成の決定,②BCAAの官能検査,③苦味抑制効果の検出の3課題を取り組むこととした.平成24年度において上記課題①と②を実施する予定であり,課題①において,BCAAに対して高いセンサ応答を示す脂質高分子膜組成を決定し,苦味センサとして十分な性能を有する事が分かった.課題②におい,BCAAの官能検査を実施し,課題①で開発した苦味センサのセンサ応答との比較を行った.従って,平成24年度の研究実施計画を予定通り実施できたといえる.さらに,課題①において,難航する事が予想されていたが,目標としていたセンサ感度を有する脂質高分子膜組成を予定より早く探索できたため,次年度実施予定であった課題③を前倒しで開始する事が出来た.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に前倒しをして遂行した課題③について,引き続きセンサ応答のメカニズム解明を中心に進め,必要に応じて課題①,②の見直しを行い,フィードバックさせる.平成24年度に,苦味抑制効果を苦味センサを用いて検出可能であることが示唆されたが,センサ応答の抑制メカニズムの解明には至っていない.従って,BCAAと苦味抑制剤の化学的特徴を考慮し,脂質高分子膜との相互作用について検証する.また,BCAAを含む苦味を呈するジペプチドは,生体において機能性を有し,医薬品やサプリメントに用いられており,苦味センサの高機能化として求められる測定対象物である.従って,ジペプチドにも対象を拡大し,苦味センサのさらなる高機能化を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
苦味センサの作製に必要な,脂質,可塑剤,高分子といった試薬,測定に使用する電極,測定対象であるBCAAやジペプチド等を購入する.また,本研究で得られた成果を公表するための,学会参加費,旅費,論文投稿代として使用する.
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