研究課題/領域番号 |
24656213
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
内藤 裕義 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90172254)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機トランジスタ / 塗布プロセス / ナノ粒子 / 有機・無期ハイブリッド / C8-BTBT / 短チャネル |
研究概要 |
塗布型薄膜トランジスタの実用には5ミクロン程度の短チャネル長で移動度が1 cm^2/Vsを超える素子特性が必要となる。しかし、実用上重要となるこの指標が実現できていない。本研究では、接触抵抗の低減とチャネル移動度の増大を有機半導体へのMoO_3ナノ粒子添加のみの極めて簡便な手法により同時に実現することを目的とした。MoO_3ナノ粒子を添加することにより有機半導体の結晶性の向上(チャネル移動度の上昇、チャネル抵抗の減少)、有機半導体/ソース・ドレイン電極間の接触抵抗の低減(MoO_3と有機半導体との電荷移動を利用)を実現することにより高移動度、短チャネル薄膜トランジスタを実証する。 本年度は、表面を化学修飾したMoO_3ナノ粒子と有機半導体 2,7-dioctyl[1]benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene (C8-BTBT)による有機・無機ハイブリッド半導体により高移動度、短チャネル薄膜トランジスタを実現することを目指した。 MoO_3ナノ粒子はMoO_3粉末のエチルアルコール溶液の上澄み液から得ることができた。 さらに、塗布プロセスを用いた薄膜トランジスタ作製のプロセス構築を行った。ソース・ドレイン電極を基板内に埋め込み、有機半導体層の平坦化を実現したプロセス開発に成功した。想定外の成果として、埋め込み電極を有するトップゲート構造の薄膜トランジスタにより、数Vの低駆動電圧を実現した。さらに、数ナノメータのMoO_3蒸着層をソース・ドレイン電極上に設けることにより最高で0.4 cm^2/Vsの電界効果移動度を得た。この場合には埋め込み電極は用いず、通常の基板上にソース・ドレイン電極を用いるプロセスで行っているため、MoO_3ナノ粒子の添加および埋め込み電極を用いたプロセスにより、本研究の目標値を達成する可能大である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MoO_3ナノ粒子はMoO_3粉末のエチルアルコール溶液の上澄み液から得ることがきることを確認したが、その表面をドデカン基、メチル基、フェニル基等で化学修飾したナノ粒子の合成が遅れている。 一方、塗布プロセスを用いた薄膜トランジスタ作製のプロセス構築は順調に推移している。有機半導体(C8-BTBT)へのMoO_3ナノ粒子の効果を正確に把握するため、ソース・ドレイン電極を基板内に埋め込み、有機半導体層の平坦化を実現したプロセス開発に成功している。埋め込み電極を有するトップゲート構造の薄膜トランジスタにより、数Vの低駆動電圧を実現している。さらに、数ナノメータのMoO_3蒸着層をソース・ドレイン電極上に設けることにより最高で0.4 cm^2/Vsの電界効果移動度を得ている。 以上、合成では遅れているが、トランジスタ作製プロセス開発は順調に推移し、かつ、有機トランジスタの低駆動電圧化に成功するという予想外の成果があったため、”おおむね順調に進展している”とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、表面を化学修飾したMoO_3ナノ粒子と有機半導体C8BTBTによる有機・無機ハイブリッド半導体により高移動度、短チャネル薄膜トランジスタを実現するために、下記の研究項目を実施する。 1)MoO_3ナノ粒子の作製および表面を化学修飾したMoO_3ナノ粒子の合成。 2)MoO_3ナノ粒子を有機半導体(C8BTBT)に分散させた有機・無機ハイブリッド半導体の光・電子物性評価。 3)MoO_3ナノ粒子添加C8BTBTハイブリッド半導体を用いた薄膜トランジスタ作製および高移動度の実証。 すでに24年度において埋め込み電極構造を有する有機薄膜トランジスタの作製プロセスは確立しているため、ナノ粒子が合成できれば飛躍的に研究が進展すると期待できる。あわせて、確立しているプロセスにより0.4 cm^2/Vsの電界効果移動度を得ているため、接触抵抗の低減に注力していけば1 cm^2/Vsを実現できると期待している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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