研究課題/領域番号 |
24656215
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
土井 正晶 東北学院大学, 工学部, 教授 (10237167)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 伝送技術 / 無発熱 / スピン波 / 強磁性酸化物薄膜 / スピントルク / 微細加工 |
研究概要 |
本研究開発は簡易な磁性体素子にて電気信号をスピン波の伝播に変換することで、従来の伝送方式のような電荷の移動を伴わない、すなわち発熱を全く伴わない超低消費電力型の新規な無発熱超高速有線伝送技術を提案するものである。超小型スピントルクスピン波ジェネレータとディテクタおよび強磁性酸化物絶縁体配線を組み合わせることで簡素かつ発熱フリーの革新的な無発熱有線伝送技術を構築することを目的としている。本低消費電力・無発熱スピン波伝送システムを創製するためのスピン波伝搬配線の探索研究として、本プログラムではコプレーナ線路上の強磁性酸化物絶縁体を開発することおよび最適な微細加工プロセスを確立することを目的として研究を行う. 本年度はCr2O3(-Fe2O3)薄膜中のFeの電子状態(磁気構造)を明らかにする.ことを目的として、まずスパッタ法で作製した膜厚140nm、基板温度700℃の条件で作製されたFe2O3薄膜の57Co線源を用いたメスバウアー効果の測定を行った。低温における計測は透過型の測定系を用いるため、低温クライオスタット中に試料を装着し、室温における透過型測定を行った。薄膜の透過型計測はカウント効率が落ちるため通常ではほとんど行われていない計測方法であるが、計測効率を上げるために基板の厚さを薄くすることで、計測が可能であることを研究代表者によりすでに確認している。今回の計測では試料は0.41mmの基板を使用し、2枚の試料を重ね合わせて計測を行った。その結果、Fe2O3層によると考えられる共鳴吸収ピークが確認できたが、S/N比が不十分なスペクトルであったために超微細パラメータ(内部磁場、アイソマーシフト、四重極分裂、強度比)を解析するに至ってはいない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回のメスバウアー効果計測では試料は0.41mmの基板を使用し、2枚の試料を重ね合わせて計測を行った。約3ヶ月間の計測を連続して行い、カウントを積算したメスバウースペクトルの計測結果を得た。その結果、S/N比が不十分なスペクトルではあるが、不鮮明であるがFe2O3層によると考えられる共鳴吸収ピークが確認できた。しかし、超微細パラメータ(内部磁場、アイソマーシフト、四重極分裂、強度比)を解析するに至ってはいない。超微細パラメータの解析を行うためにはS/N比を向上、すなわちカウント効率を8倍以上上昇させる必要があり、57Co線源の強化(2倍)と基板の厚さを1/2程度薄くする(カウント4倍)必要があることが明らかになった。強磁性体薄膜の超微細構造解析の遅れに伴い、微細加工プロセスの確率には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は極薄酸化物反強磁性体Cr2O3(-Fe2O3)薄膜およびCr2O3/CoFe試料において透過型および内部転換電子メスバウァー効果(CEMS)の測定と解析を行う.低温における計測は透過型の測定系を用い、検出効率を上げるために強度の強い57Co線源および基板の厚さ0.2mm上の試料を用いて低温(~11K)から室温までの測定を行う. さらに57Feをエンリッチした試料の作製についても検討を行う。得られたメスバウァースペクトルはFe多成分非線形の最小自乗法収束計算によるによるフィッテイングにより解析する. この解析結果より得た各成分(サイト)の超微細パラメータ(内部磁場、アイソマーシフト、四重極分裂、強度比)からCr2O3(-Fe2O3)薄膜中のFeの電子状態(磁気構造)を明らかにする. 特にスペクトルの強度比を解析することで、磁気配向性について評価を行う. さらに, Cr2O3/CoFe薄膜試料において磁気配向性を評価することで界面での交換結合で励起されるCoFe強磁性層の磁気配向性についての解析を行う。強磁性体薄膜の超微細構造解析を行った後にコプレーナ線路上の強磁性酸化物絶縁体を開発することおよび最適な微細加工プロセスを確立することに展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.メスバウアー効果計測の検出効率を上げるために強度の強い57Co線源を購入する。 2.優先酸化法によるコプレーナ線路薄膜を作製するために酸素の拡散を制御することを考慮し、基板冷却機構を有する低温ステージの購入を検討している。
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