本研究は、有機半導体や無機半導体、金属ナノ粒子など様々な材料に適用可能な成膜法である多電極型静電塗布法(ナノミスト堆積法:NMD法と呼称)の開発、および新しいカテゴリの光デバイスであるディスポーザブル光機能シートの試作検証を行い、社会への学術的・産業的貢献を目指すものである。 これまでの研究において金属ノズル先端近傍に引出し電極を配置したナノミスと堆積装置の作製、高分子や低分子材料およびMgZnO系無機半導体薄膜の成膜特性評価を行ない、NMD法が簡便な装置構成にもかかわらず優れた成膜特性を有することを検証した。特に、F8BT/ZnO有機/無機ハイブリッド緑色LEDではスピンコート法で作製したデバイスと遜色ない性能を発揮することを確認した。 最終年度は以下の研究成果を得た。①通常の溶液法では均質な成膜が困難な低分子有機半導体薄膜に適用可能なマルチモードNMD法を開発し、表面粗さRMS=4nmの均質な燐光系低分子混合有機薄膜CBP:PBD:TPD:Ir(mppy)3の成膜に成功した。②NMD法によりAlq3/NPB低分子積層構造を成膜し、可溶性溶媒を用いても下地の侵食を抑制した積層成膜が可能である事を示した。③Ag層への微量Al添加によるAgの初期島状成長の抑制効果を見出し、紫外315nm~可視780nmにおける平均透過率89.0%、シート抵抗8.9Ω/sqという優れた特性を有するディスポーザブル光デバイス用MgZnO/Ag/MgZnO透明導電膜の作製に成功した。④窒化物半導体ナノ構造上と有機半導体のハイブリッド光デバイスの実現に向けて、低加工損傷で、毒性ガスを用いず、簡便な装置構成で数十nmのナノ構造を作製可能なナノ加工技術を開発した。⑤通常のコート紙やPETシート上にAgナノ粒子/PEDOT:PSS導電層を積層した上にF8BT系有機EL構造を積層した簡易型デバイスの電流注入発光に成功し、ディスポーザブル発光デバイスの可能性を実証した。
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