研究課題/領域番号 |
24656219
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
粟野 博之 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40571675)
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研究分担者 |
バン ド 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40624804)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 磁壁 / 磁壁電流駆動 / スピンロジック / 反強磁性結合 / 磁壁エネルギー / 静磁エネルギー / ピンニング / コラップス |
研究概要 |
①ANDとOR回路における原理動作の同時性を高めるための磁性ナノワイヤパターンを検討した。その結果、直線Y字型よりも曲率Y字型のほうが入力磁区合体の確実性が向上し、同時性も向上することが確認できた。 ②NOT回路の動作原理をOOMFFシミュレーションで確認した。ただし、実際作成するためには2重露光が必要となり、位置合わせ精度が重要となる。しかし、現有装置の位置合わせ精度が良くないことから位置合わせ精度に鈍感なパターンを考案した。この変形パターンで再度スピン分布シミュレーションを行っている。 ③NOT回路実現には、非磁性 Rh 数原子層をTbFeCo層の間に挿入する必要がある。そこで、NOTを実現できる反強磁性結合状態の条件だしを行った。その結果、3原子層程度が最適であることを確認した。また、反強磁性結合力の制御も重要なために非中間層をRuにした場合の反強磁性結合も調べた。その結果、Ru原子層は1原子層が最適であることを明らかにした。次年度にRhとRuの2種類のNOT回路を作成し、動作確認を行う。 ④高速磁壁駆動現象を観察するために、ホール効果測定を行った。現有のデジタルオシロはノイズが多く観察不可能なためノイズが10分の1まで低く帯域が2倍(2GHz)のデジタルオシロを購入し、高速ホール信号検出を試みた。ノイズは低減したが、信号が極めて小さいことが分かった。次年度は広帯域アンプを購入して信号を増幅することで高速磁壁移動を検出する。 ⑤高速磁壁移動を磁気探針で検出するためのMFM用探針アダプターを購入した。ただし、この信号はホール信号よりも小さく探針の接触状況によっても信号量が変化するため接触方法に工夫が必要となる。したがって、この微小信号検出にも上記④の高速アンプが必要であり、この増幅効果によりスピン情報を獲得する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①NOT演算を実現するTbFeCo/RhまたはRu/TbFeCo3層積層膜を作成し、反強磁性結合条件を明らかにした。反強磁性結合を実現するためにはTbFeCo4nmに対し、Rh層厚は3原子層、Ru中間層の場合には1原子層が好適であることを見出した。 ②この両TbFeCo層同士が互いに反結合状態している試料に対し、外部磁界を加えて磁壁が移動する様子を偏光顕微鏡で観察した。NOT状態を実現するためには、両TbFeCo層の磁区が互いに強い反強磁性結合を保存したまま同時に移動する必要がある。今回の試作におけるTbFeCo層厚は4nmと光の侵入長に比べて非常に薄いため、偏光顕微鏡で両層の磁区状態を観察できる。この方法を用いて両TbFeCo層の結合磁区が磁壁移動の際に同時に動いていることが観察できた。したがって、ANDとNOTパターンを作ることでNAND演算が可能である。しかし、このサンプル作成には重ね露光が必要であり、現有装置の位置合わせ精度では足りない。そこで、位置合わせ精度を緩和できる試料パターンを考案した。この試作を行いNAND動作を確認する。 ③高速磁壁駆動状況の観察は極めて難しいテーマであるが、高速アンプと高速デジタルオシロの利用で磁壁駆動の時間的変化検出を試みる。また、MFM探針に電流を流せる特殊アダプターを購入したのでこの探針を使って空間分解能も絞り、前述高速信号検出器を使って高空間分解能かつ高速時間分解能による磁壁駆動検出にもチャレンジする。
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今後の研究の推進方策 |
①NAND、NORデモンストレーション 前年度開発した重ね電子線描画露光精度を必要としない変形回路(斜めに磁壁移動を行う新たな要素)の影響を調べる。上記検討結果を反映させたNAND, NOR 演算が可能な試料を作成し、NANDおよびNOR演算のデモンストレーションを行う。 ②当初計画にはなかったが、さらにロジック動作に必須な「FUN OUT」のデモンストレーションにもチャレンジする。FUNOUTの回路数を増やす場合には、磁壁移動の同時性が問題となる。この点についてもアイデアが必要でその検証も行う。 ③これらが可能であれば、複雑な演算デモンストレーションも可能になる。時間が許す限り複合演算デモンストレーションにもチャレンジしたい。 ④高速磁壁駆動観察については、前述したように高速アンプと高速デジタルオシロの測定系整備が重要である。これを立ち上げホール効果やMR測定による高速磁壁駆動観察にチャレンジする。 ⑤上記は高時間分解能を有する測定系立ち上げにより高速磁壁駆動の観察であるが、検出にMFM探針への電流量によって磁壁駆動を検出できる可能性がある。この高空間分解能かつ高時間分解能観察方法にもチャレンジする。
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次年度の研究費の使用計画 |
部品費 1,100,000円 旅費 400,000円 その他 150,000円 合計 1,650,339円
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