今後の研究の推進方策 |
今年度は、WSin/Siヘテロ接合において、WSin層の2次元的なキャリア輸送特性評価をさらに進め、外部電界によるWSin層のバンドギャップ変調を実証する。そのために、WSin層をチャネルにした電界効果トランジスタ構造を試作し、電界印加によるキャリア輸送特性の変化を検出する。これを支援するために、デバイスシミュレーションによるトランジスタ特性の解析も試みる。また、ギャップ変調を直接観測するために、電界を印加しながら、WSin層の反射率や透過率を測定する。そのために、SOIだけでなく、SOQ(silicon on quartz)基板を用いて、WSin/Siのヘテロ接合の形成を行う。このために必要なSOI,SOQの極薄膜化や、表面を清浄化技術や平坦化するプロセスを確立する。 また、Si表面上に、種々のMSinを単位構造としたMSin層をヘテロエピタキシャル的に作製しドーピングを実証するために。これまで、MとしてWを用いた実証を行ってきたが、同じ価数でd軌道のサイズの異なるCrとMo、6価を中心に、価電子数の調整によるドーピングを行う目的で、4価(Ti, Zr, Hf)、5価(V, Nb, Ta)、7価(Mn, Re)を用いた実証を行う。そのうえで、Hall効果測定によるキャリア輸送特性評価を行う。 さらに、研究計画外ではあるが、MSin膜の熱輸送特性の評価も行う。MSin膜の熱伝導度が低い場合、自己加熱によるキャリア輸送特性の劣化が懸念される。最近では、熱伝導率の高いSiであっても、ナノ構造化することで熱伝導率が低下し、微細トランジスタでは自己加熱の問題が顕在化する懸念がある。熱輸送を考慮したデバイス展開を考える上で、MSin膜の熱伝導率計測は、新材料であるがゆえに特に必要である。
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