我々が見出した金属触媒を用いたSiの気相エッチング現象について、Au膜を触媒とした場合と、Pd膜を触媒とした場合で、根本的に異なる機構でエッチングが進行することを明らかにした。Au膜の場合、Si原子が粒界を通ってAu膜表面にまで拡散し、Au膜表面において酸素およびフッ酸ガスと反応してエッチングされる。その結果、Au膜をパターン化してSi上に堆積させてエッチングを行うと、Auパターンと同じ形状の孔がSi内に形成される。一方、Pd膜を用いた場合、PdとSi界面にごく薄い合金層が形成され、この合金層表面でSiのエッチングが進行する。合金層はPdとSiの相互拡散で形成されるために、Si上に微小なPd膜を堆積させた場合、エッチングの進行とともに、合金層が横方向に拡大してゆき、結果的に半球面の形状を持った孔が形成されることになる。AuとPdにより、それぞれ、特徴的な形状の孔形成が行われるため、異なる用途への応用が期待される。 さらに詳細なエッチング機構を解明するために、無水フッ酸を用い、乾燥空気雰囲気でエッチングを行った。その結果、Au膜を触媒とした場合には、雰囲気に水蒸気が存在しないとエッチングが進行しないが、Pd膜を用いた場合には、水蒸気が存在しなくてもエッチングが進行することが明らかになった。SiO2のフッ酸によるエッチングは水が存在しない場合には進行しないことが知られており、Au膜を触媒とした場合には、Au膜状で一旦SiO2が形成され、それがフッ酸と反応することによりエッチングが進行すると考えられた。一方、Pd膜の場合、SiO2を経ずにPd-Si合金が直接反応し、エッチングが進行すると考えらえた。
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