研究課題
グラフェンを用いた新規素子の提案という目的に沿って、主に次の成果が得られた。(i)歪みグラフェンを用いた新規FET制御機構: グラフェンのアームチェア方向にそって有限長のチャネル部分にのみ引っ張り歪みを与えた電界効果型トランジスタの特性を、強束縛近似法とグリーン関数法を用いて調べた。その結果、10%以下の小さな歪み印加によって、バンドギャップが無いにも関わらず、歪み誘起擬似磁場効果によって、電流のオンオフ比7桁を超える理想的なスイッチング特性が得られる事が明らかになった。更に、FETのスイッチング性能の指標の一つであるサブスレッショールド係数が、通常のFETの場合60mV/decadeであるのに対し、提案構造の場合、20mV/decade程度の値が実現され、通常の半導体FETと比較して優れたスイッチング性能を示す事も明らかにした。(ii)光誘起電気伝導を用いたグラフェンの歪み検出:歪みグラフェン素子の応用には、印加された歪みの大きさ、方向の効率的な検出方法の確立が重要であるが、グラフェンに直線偏光を照射した時の光誘起電気伝導度の偏光方向依存性より、歪みの方向、大きさの同時検出が可能である事を明らかにした。(iii) グラフェンナノリボンを用いた純粋スピン生成素子: グラフェンを用いた新規素子の別の事例として、一般に位相の異なる二種類の振動電場を印加した場合に引き起こされる量子ポンプ効果に着目して、ジグザグ端グラフェンナノリボン(ZGNR)に対して時間変化する電場を与えた場合の量子ポンプ効果に起因するスピン依存電気伝導特性を、スピン密度汎関数タイトバインディング法と非平衡グリーン関数法を用いる事により理論的に調べた。その結果、ZGNRの対向する端に位相の正負が逆の振動ゲート電圧を与える事により、電荷の流れを伴わないスピンの流れ(純粋スピン流)の生成が可能である事を示唆する結果を得た。
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