研究課題/領域番号 |
24656238
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
松尾 直人 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10263790)
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研究分担者 |
部家 彰 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80418871)
山名 一成 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70192408)
神田 一浩 兵庫県立大学, 付置研究所, 教授 (20201452)
大村 泰久 関西大学, 工学部, 教授 (20298839)
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キーワード | DNA / メモリートランジスタ / グアニン / リフレッシュ / SOI |
研究概要 |
我々は長鎖(136nm)DNAが電荷保持特性を有する現象を世界で初めて発見し,2011年にSolid State Dev. and Mat.国際会議に発表した.DNAがトランジスタ特性を示す事はこれまでに何例も報告されているが,電荷保持特性に関する報告は皆無であった.又,これまでの報告は全て,金電極を用いていたが,本研究はSOI(silicon on insulator)基板を微細加工する事により,ゲート電極,ソース・ドレイン電極を全てSiで形成するという,世界初めての構造によるものである(N.Matsuo et al,JJAP,51,04DD13,2012.).本研究における当該年度の目的は,電荷保持特性の機構を明らかにする事,及びDNAの電荷保持特性における信頼性を確認する事,である. 当該年度,新たにDNAトランジスタ(W/L=100um/120nm)を広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所において作製した.λ-DNAを用いており,PCR(polimerase chain reaction)法により400bpのものを作製し,Siソース・ドレイン電極間に架橋している.Id-Vd特性の再現,及びゲート電圧による電流制御を確認すると共にリフレッシュ特性の再現も確認した.更に,これまでの実験データの総括(特にId-Vd特性にヒステリシスを生じたという実験結果),及び理論検討(特にグアニン塩基の酸化還元電位の値から電子を放出し易いという事象)により,電荷捕獲サイトがグアニン塩基である事もほぼ同定できた.この捕獲サイトはメモリー効果を誘起すると共にチャネル伝導にも大いに影響を与える事がエネルギー帯構造の検討により判明した. 尚,高温動作の検討も行う予定であったが,この実験に関しては次年度に行い,CMOS compatible-素子としてのポテンシャルを調査する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNAトランジスタのチャネル伝導機構,及び,電荷捕獲機構の検討に予想以上に時間を要した.又,実験条件の設定等は手探りの部分もあり,素子作製にも時間を要した.この時間超過により,予定した処までは進捗しなかった.しかし,前者に関しては,グアニン塩基がチャネル伝導にもメモリー効果にも寄与しているという事がほぼ明らかになりつつあり,時間を要したのであるが,得られた知見は今後,実験結果を検討する場合の大きな助けになると考えている.又,DNAトランジスタ作製も手探りが続いたがノウハウも蓄積されており,今後,作製時間は短縮されると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
以上の結果を踏まえて,今年度は以下の取り組みを行う. 1.短鎖20-30nmDNAのチャネル伝導と電荷保持特性のデータ採取,及び,それらの機構の解明:前年度迄はチャネル長120nmのDNAトランジスタであったが,更に短チャネルのものを作製し,特性変化を検討する.尚,DNAトランジスタは広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所において作製予定. 2.信頼性データの取得:DNAをSolid state deviceとして応用する場合,高温動作は必須であり,どの程度の高温状態においてチャネル伝導,及び,メモリー効果が維持されるか否かの検討を行う.塩基は水素結合で繋がっておりDNAの周囲に水分子がある場合はせいぜい100℃程度が限界であるが,乾燥状態では200-250℃を期待できる.高温測定は関西大学において大村泰久教授の指導の下,測定を行う. 3.正ゲート電圧においてもId-Vd特性をゲート制御できるデータを得ているのであるが,負ゲート電圧制御(ホール電流)に比較して3桁小さい値を示す.しかし,この結果は塩基を調整する事により,ホール電流とほぼ同桁の電流値を得る事も可能である事を示唆しており,アンビポーラ素子の実現を期待できる. 4.次年度への申請に向け,課題抽出を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
DNAメモリートランジスタの作製は京都大学ナノハブ拠点,広島大学ナノバイオ融合科学研究所において行っており,使用料は作製装置,使用時間,に基づき支払っている.当該年度においてはDNAメモリートランジスタ以外にもGeトランジスタの作製に借用しており,プロセスが重複する箇所等は使用料を削減する事ができた.又,SOI基板の購入を検討していたのであるが,予定していた額よりも廉価の基板を購入できた.以上2つの理由により,次年度使用額を生じたものと考えている. 次年度は以下で予定している.基板作製は広島大学ナノバイオ融合科学研究所において行う. 基板作製費用(広島大):200,000円,SOI基板購入費用:160,000円,試料分析費用:200,000円,旅費:300,000円,論文投稿料:200,000円,報告書作製費用:100,000円 尚,旅費の内100,000円は研究分担者の大村泰久氏が使用予定.
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