これまでの同一チャネル全二重無線通信技術では,自ノード送信アンテナから受信アンテナへの回り込みを抑制するための相殺的干渉性能と,他ノードへの送信のための遠方界を考慮し,送信電力の異なる複数送信アンテナを用いた干渉抑制技術を用いて同一チャネル全二重無線通信を実現していた.したがって,複数送信アンテナからの送信電力を調整するために,可変素子を用いねばならず,それによって性能が劣化していたことに加え,複数送信アンテナからの送信信号の重ね合わせによって遠方界でも指向性が発生していた. この問題に対して,昨年度は,個体差の調整が可能なアンテナの設計を行った.具体的には,送受信各1本のダイポールアンテナ間に共振器構造を配置したモデルによって,受信アンテナへの回り込みが60dB程度削減できること,そして共振器構造のパラメータを調整することで,送信アンテナから受信アンテナへの干渉を低減できる周波数帯を調整できることが可能であることを示した. 今年度は,実装の視野に入れ,給電線からの反射による回り込みを削減するため,給電線を含めてアンテナパラメータの調整を行い,干渉を低減できることを確認した.また,これまでは送受信ともに1本ずつのアンテナのみを用いていたが,送受信合わせて3本のアンテナを配置し,3本のアンテナ間に共振器構造を1つずつ配置した場合のシミュレーション評価を行い,それぞれのアンテナに対して干渉を低減できることを確認し,MIMOでの同一チャネル全二重無線通信の実現可能性を示した.
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