研究課題
本研究では,暗号学のシャノン限界を超える物理暗号を実現する理論モデルである一般化盗聴通信路にほぼ等価な特性を持つ一般化コヒーレント・パルス位置変調によって暗号化し,受信時の量子雑音によって安全性を強化する暗号を実現する方法を解明することに挑戦することを目的としている。目標達成に向け,平成25年度は,一般化コヒーレント・パルス位置変調方式による光信号の暗号化機能の特性および通信方式的な特性を計測した。また,量子雑音によるマスク効果も評価した。以下に,概要をまとめる。前年の原理実験確認実験系を運用し,各部の機能の特性を計測した。実験系全体をシステムとして捉えて,光信号への暗号化の特性を計測した。現状,変調器のサイズが暗号化する際の光信号の多値化への分解能を制限していることを明らかにした。また,変調器の変調特性で暗号化速度が決まることも明らかになった。また理論研究では,一般化コヒーレント・パルス位置変調によって暗号化される光信号を効果的に量子雑音によって隠すための方策を検討した。さらに,理論グループから提言によって,量子雑音によるマスク効果を評価するためのシミュレータを構築した。それに基づいて,マスク機能評価シミュレーションを行い,マスク効果により盗聴者の観測波形が変形することを検証した。次に,信号対雑音比を評価し,理論的な安全性評価と対比した結果,理論的予測と整合していることを確認した。現時点では,原理実験のため,速度や安全性の性能自身は十分ではないが,この成果をベースとして,開発研究を継続すれば,社会的要請である暗号学のシャノン限界を破る実用的な暗号が実現できる可能性を示唆することができた。
すべて 2014
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Quantum Information Processin, Spriinger
巻: 13 ページ: 印刷中
DOI 10.1007/s11128-014-0748-4