研究課題/領域番号 |
24656249
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 阿南工業高等専門学校 |
研究代表者 |
杉野 隆三郎 阿南工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10259822)
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研究分担者 |
小林 美緒 阿南工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (30462146)
福田 耕治 阿南工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40208955)
伊丹 伸 阿南工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (60212982)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオミメティクス / 生命系のゆらぎ / 生物の適応行動 / 魚類行動 / カオス / フラクタル / 数理モデリング / 制御アルゴリズム |
研究概要 |
本研究の目的は,生物から機能や構造を見出して工学に応用するバイオミメティクスの立場から,魚類行動に注目してその適応的生物行動の原理を解明し,その工学的応用の可能性を研究することにある.徳島県近海で採取された魚類を対象とし,その魚群行動の分析をカオス・フラクタル理論を用いて実施することで,魚類の知覚・意思決定・行動の各プロセスを定量的に定式化する.さらに,システム工学的視点に立った魚行動モデルを構築,その一般的な魚行動モデルを実際の漁法や移動ロボット制御に応用することで,魚行動のバイオミメティクス応用に関する有効性を明らかにすることが目標となる.この目的に沿った平成24年度の研究計画に対する実績を以下に示す. 1.魚種としてマアジを供試魚とした水槽実験を実施して個体数50の群行動を定量的に調べることを目標として十分な資料数(N=64)の実験データが取得できた. 2.VTR画像から複雑な魚群行動を解析する計測解析システムを開発し,水中構造物やLED光などの光刺激等の環境刺激を受けた魚群行動のリアプノフ指数と自己アフィン指数を抽出することに成功した. 3.水槽実験の結果から個体と群れの行動に対する行動パターンを分析し,魚行動の自発的ゆらぎ項b(t,x,individual)が記述可能な数理モデリングを検討し,魚の個体間そして水中構造物の相互作用を誘引・忌避に関するポテンシャル場を仮定した計算アルゴリズムを構築し,数値実験により水槽実験と定性的に一致する結果を得ることができた. 以上により,研究計画の「フェーズ1:徳島県沿岸で捕獲した魚類(アジ,ブリ)を水産研究所で実験,魚類の行動パターンをカオス・フラクタル理論で解析」を達成するとともに,「フェーズ2:解析した魚行動パターンから精密な魚行動モデルを構築し,ゆらぎ・行動律速方程式による数理的定式化」を部分的に達成できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・統計的議論が可能な資料数(N=64)のデータを取得できたが,その画像処理と解析に相当程度の手間と時間がかかり,すべてを解析できていない.現状では,N=1の画像処理と複雑系解析を完全に仕上げるのに,研究者が専業的に従事して約3日程度かかっている. ・魚群行動の水槽実験で用いてる撮像システムが既存のVTRカメラを用いているので,良質な動画データを取得するの技術的な手間と特殊な撮像テクニックが要求されるため,資料数一回分の水槽実験に手間と時間がかかっている. ・以上の結果,水槽実験の結果を十分な分析・検討することで構築が可能となる「ゆらぎ・行動律速原理による魚行動モデル」の数理モデルを仮説検証するタイムスケジュールが圧迫されている.
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今後の研究の推進方策 |
先の項目で遅延していることを補い,本研究をさらに深いレベルで達成するために今後取り組む研究計画を以下に示す. 1.水槽実験で用いる撮像システムの改善:現在用いてる既存のVTRカメラをCCDモジュールを用いたコンピュータ撮像システムに改変して,魚群行動の撮像から画像処理直前のデータ保存までを自動化する.以上により動画取得の高速化と撮像データの高精度化を図る. 2.動画像処理アルゴリズムの向上:現在用いてる画像処理プログラムは魚群の個体分離アルゴリズムに任意性があり,ターゲット画像の重なりを判定する閾値の設定を手動で設定する必要があることで画像処理解析の計算速度が遅くなっている.そこで,閾値の判定を画像に含まれる統計情報から自動的に設定するアルゴリズムを導入する.このことにより画像処理プロセスの高速化を図る. 3.カオス・フラクタル解析アルゴリズムの開発:これまで用いてきた泳速ノルムと遊泳軌跡のカオス・フラクタル指標に加え,さらに詳しく生物行動のゆらぎと行動決定の素過程を分離することができる複雑系解析の手法を開発する.
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次年度の研究費の使用計画 |
すでに申請した支払請求の変更に基づいて,本年度の研究計画が順調に進展した場合に想定される次年度の研究費の使用計画を以下に示す. 1.設備備品費は,撮像システムの改良をする必要があるため,次年度の旅費を削減して本年度で集中的に開発するので「0円」となる.消耗品は,若干の電子部品や記録メディア,印刷トナーなどの購入があるので「50,000円」とする. 2.旅費は,共同研究者2名による研究成果発表として「200,000円」とし,人件費・謝金はフィールド調査の傭船料や実験データ整理として「150,000円」とする. 3.その他は,研究の高度化と進展に伴う参考文献購入費や論文研究成果の投稿料として「200,000円」とする. 以上,合計は「600,000円」となり,支払請求変更後の研究費使用計画を満足する.
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