研究課題/領域番号 |
24656250
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
枦 修一郎 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (90324285)
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研究分担者 |
石山 和志 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (20203036)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アモルファス磁歪薄膜 / 磁気異方性 / 逆磁歪効果 / 歪センサ |
研究概要 |
アモルファス磁性(FeSiB)/非磁性(Mo,Ti)積層構造膜の膜厚比や素子のアスペクト比を変化させ、磁化特性測定および磁区構造観察を行い、磁気異方性誘導の状態について基礎的な検討を行った。 具体的には、下部層のMo薄膜の形状を短冊状(膜厚:3μm,幅2mm×Lmm,L:変数)に、またその上に成膜するFeSiB薄膜は面内における形状の影響を無くすために円盤状(膜厚:1μm,直径2mm)にして検討を行った。FeSiB層の形状は固定し、Mo層の短冊長手方向の長さを徐々に延長させた。成膜後には磁性膜中の磁化が面内で等方的になるよう回転磁界中熱処理(250,300,350℃)のみを施すと同時に、成膜時に印加された歪を取り除いた。Mo層の形状が正方形(2mm×2mm)の場合、上層のFeSiB層は等方的な磁気特性を示したが、Mo層のアスペクト比が大きくなるに従って、Mo層の短冊幅方向にFeSiB層の磁化容易軸が揃うことが、磁化曲線の測定結果および表面磁区観察結果からも確認された。また熱処理温度の変化に対するMo層のアスペクト比の影響を調べたところ、350℃の場合Mo層の長さが4mm以上で、誘導される磁気異方性の度合いは同じであったが、熱処理温度が低くなるに従い、大きな磁気異方性を得るためにはアスペクト比を大きくする必要があることが確認された。以上の結果より、Mo層のアスペクト比と熱処理温度の組み合わせでFeSiB層の誘導磁気異方性を細かく制御可能であることが明らかとなり、熱膨張の差により生じる応力の効果について、定量的な解明の指針を得ることができた。またこれらの結果より、平成25年度に作製を予定している超高感度歪センサの設計に関わる重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mo層の形状のアスペクト比と回転磁界中熱処理の条件によって、FeSiB層の誘導磁気異方性を定量的に制御できる目安が得られ、次年度の超高感度歪センサの設計にかかわる指針が得られたことにより、平成24年度の研究目標を十分達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた知見を基にして、積層構造を利用した1ターンミアンダ形状の歪センサ素子の設計と試作を行い、歪感度特性やセンサの動作点などの評価結果より、高感度化のための最適設計指針の確立を目指す。 (1)シミュレーションによる層間に働く応力の検証 層間に働く熱膨張差応力により誘導される磁気異方性のモデルを作成し、シミュレーションによる構造解析を行い作成モデルの検証を行う。これにより、本手法により誘導される磁気異方性の理論的解釈と定量的な制御技術の確立を目指す。 (2)高感度歪センサ素子の構造最適化及び性能評価 ミアンダ形状の歪センサ素子の最適設計ならびに試作を行い、高感度化と素子作成時の磁性膜の異方性の強弱の制御により、動作点を任意に設定可能な歪センサ素子の実現を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用計画の概要を下記に記載する。平成24年度に得られた成果をもとに、歪センサを製作し特性の評価を行うとともに、学会での研究成果発表を予定している。 ・歪センサ作製露光用マスク作製費 ・歪センサ素子のインピーダンス測定用ウェハープローブ購入費 ・研究成果発表旅費
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