研究課題
本研究では、個人レベルで生活環境における各種化学物質のその場計測を可能とし、環境医学的な見地から健康的な生活環境の構築を支援するためのガス計測デバイスの開発を行った。タンパク質の基質特異性にもとづく高い選択性を特徴とするガスセンサを開発し、その高感度化に向けた検討を行うとともに、当該システムの応用展開の可能性について検討した。モデル成分としてこれまで検討してきたホルムアルデヒドの高感度計測に加え、酵素反応において電子受容体として酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を利用しうるさまざまな酵素反応系について、分光学的手法、電気化学的手法の双方を比較しながら、幅広い医学・健康科学的応用と高感度計測について模索した。本センサでは、基質となる計測対象の分子を脱水素酵素反応によって酸化し、その際に生じる還元型のNADHを検出する。つまり、本質的にはNADHセンサである。そこでこれまで最も高感度に計測できている蛍光検出法については、光源用の電源の安定化などにより最適化を図るとともに、吸光度、電気化学法についても比較検討を行った。この結果、蛍光検出では概ね最適化が進んで10nM程度のNADHが検出可能であるのに対し、吸光度と電気化学計測による測定では、共に1uM程度が検出限界であった。ただし、電極を用いた計測では今後の最適化により蛍光と同等以上の感度でNADHを計測できる可能性も残されている。ガスセンサとしての感度の向上に関しては、サブppbレベル(100ppt程度)にて応答出力が確認され、目標値は概ね達成された。また環境ガス計測に加えて乳酸およびコルチゾールなど、生体由来成分についても応用できるか評価した。この結果、乳酸については明瞭な出力応答が確認された。セロトニンなど神経伝達物質の多くは酸化反応によってアルデヒドとなるため、今後応用の可能性が考えられる。
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10.1016/j.snb.2013.05.071