研究課題/領域番号 |
24656254
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐々木 修己 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90018911)
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研究分担者 |
大平 泰生 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10361891)
崔 森悦 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60568418)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プラズモン / 近接場 / 金薄膜 / 微細加工 / アゾベンゼン薄膜 / 光干渉 |
研究概要 |
金属薄膜の表面に微細なピンホールや溝構造を加工することはプラズモンを発生させるためには不可欠なことであり、まず、この加工方法について以下の実験を行った。真空蒸着でガラス基板に製膜した膜厚約40nmの金薄膜上に、スピンコートで膜厚約150nmのアゾ膜を製膜した。波長515nm、出力20mWのレーザを用い、レンズによるビーム集光点でアゾ膜の中にピンホールの加工を行った。その後、2倍に希釈した王水で5分間エッチングし、クロロホルムでアゾ膜を除去した。エッチングした金薄膜の透過光学顕微鏡像およびAFM像から、金薄膜表面に直径20m、高さ30nmの台形構造が形成され、その中心付近の金薄膜内部には直径5m、深さ約40nmのピンホールが形成されていることが確認できた。ピンホールの深さ約40nmは金薄膜の膜厚に対応することからも、アゾ膜に光照射した部分がマスクとして働き、王水により金属がエッチングされたと考えられる。 次に、上記のように金薄膜に加工したピンホールをエバネッセント波干渉計によって観測した。レーザ光をビームスプリッタで2つに分け、一方のレーザ光をプリズム前面に全反射角以上でガラス側から入射させた。プリズム前面には金薄膜が置かれており、プリズム前面からの反射光と2つに分けもう一方のレーザ光との干渉縞パターンを観測することによって、反射光の位相分布を検出した。その結果、金薄膜にピンホールが形成されている領域では、位相の値が大きく変化していることが確認された。このことから、金薄膜のピンホール形状によってプリズム前面に存在しているエバネッセント波からプラズモンが励起されたと考えられる。 最後に、上記の実験結果を踏まえて、先鋭化したプラスチックファイバープローブによる近接場およびピンホール構造を有する金薄膜を用いる表面プラズモン干渉計システムの考案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伝搬光でピンホール加工したアゾ薄膜を用い金薄膜をウエットエッチングする微細加工法の特性を調べた結果、本加工法によって金薄膜に微細なピンホール構造を形成できることが明らかにされた。このように微細加工された金薄膜を用いれば、金薄膜に励起された表面プラズモンをピンホール構造によって通常の伝搬光に変換することができる。この表面プラズモン発生と伝搬光への変換は本研究で目指す干渉計測装置の重要部分であり、上記の金薄膜デバイスによって本研究を次の段階に進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
金薄膜の微細なピンホール構造によってエバネッセント波からプラズモンが励起されると考えられる実験結果を踏まえて、プリズム前面に置かれたピンホール構造を有する金薄膜を用いた表面プラズモン干渉計システムの構築へと研究を進めて行く。すなわち、先鋭化したプラスチックファイバープローブの先端にレーザ光を入射し近接場を発生させ、この近接場で金薄膜表面に表面プラズモンを励起する。金薄膜表面には置かれた測定対象を伝搬したプラズモンは、金薄膜ピンホールによってプリズム前面からガラス側へ伝搬する散乱光に変換され、この散乱伝搬光とファイバープローブに入射させたレーザ光とを干渉させる。干渉縞パターンの位相分布を検出することによって、測定対象の屈折率分布や表面形状分布を測定できることを明らかにする。上記の表面プラズモンの発生方法は、当初の研究計画でのピンホールによる表面プラズモンの発生方法と異なるが、プラズモンの発生位置を自由に変化させることができるため,初期段階の研究では望ましい発生方法である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度への繰越が認められているため、今年度の僅かな残額を繰り越し、翌年分助成金と合わせて有効的な使用を考えている。
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