研究概要 |
導電性の圧電体では、内部電界が短絡してしまうため、その圧電性を評価することができない。しかし、超高周波数の弾性波を用いれば、内部電界の短絡を防ぐことができ、圧電性を評価できる可能性がある。そこで本課題では、ブリユアン光散乱法を用いた、GHz域の超高周波音速測定を応用し、導電性強誘電体の圧電性分布評価システムの確立を目指している。平成24年度はシステムの設計を目的に下記の研究を行った。 (試料の選択および試料の加工)まず、数種の材料中から、透明で抵抗の低い圧電体を実験対象として選定した。実際に導電性が低いGaN圧電バルク材料を準備することができた。光散乱実験に適した測定試料となるように、このバルク材料を薄片状に加工し、試料薄片の背部に光反射用のミラーを装着した。また、4端子法を用いて作成した試料の抵抗値を測定した。 (ブリユアン光散乱計測システムの改良)試料の温度を変化させながら、非接触で光散乱測定を行うため、薄片試料用の温度制御システムを構築した。液体窒素とヒータにより-100~200℃までの試料温度制御を実現できた。ブリユアン光散乱法では、散乱光の周波数シフトからGHz域の音速を測定する。微弱な散乱光測定の精度を改善し、音速の測定誤差を10m/s程度に低減できた。また、試料中の音速分布を計測するため、光散乱光学系を工夫し、Reflection Induced θ Angle 配置で試料を2次元的に移動させながら測定できるシステムを構築した。 (GaN試料の測定)上記の改良システムを用いて、GaN試料中の音速の温度依存性を測定し、音速の温度係数の測定に成功した。その成果を下記の国内学会で報告した。 市橋隼人, 杉本剛士, 柳谷隆彦, 高柳真司, 松川真美, Brillouin散乱法によるGaN単結晶の音波物性測定, 2013年第60回応用物理学会春季学術講演会 (2013.3)
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