研究課題/領域番号 |
24656263
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大塚 敏之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40272174)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非線形システム / 制御理論 / 可換環論 / 代数幾何 / システム解析 / 最適制御 |
研究概要 |
本研究の目的は,離散時間多項式システムを主な対象とし,(1)有限の計算手順による可制御性判別法の構築,(2)有限の計算手順による安定性判別法の構築,(3)最適制御問題を確実に解くアルゴリズムの構築,(4)数式処理言語による可換環論的アルゴリズムの実装,(5)可制御正準形の拡張,(6)安定化状態フィードバック制御の設計方法構築,(7)幅広い分野の実問題への応用,を達成することである. 平成24年度には,まず,大域的可制御性に対して,多項式写像固有の性質を利用して,可観測性と同様に有限個の代数方程式で特徴付けられる判別法を見出した.また,安定判別法に関しては,線形システムの安定条件を包含するような十分条件を見出した.さらに,有限時間最適制御問題の解法として,未知の共状態(随伴変数)および最適制御入力が満たすべき代数方程式を,終端時刻から逆時間方向へ逐次的に構成していく方法を発見した.この方法は,多項式環におけるグレブナー基底を利用しており,線形システムの最適制御において,最適性条件である2点境界値問題からリッカチ方程式を導出する方法の一般化になっている. 一方,可制御正準形に関しては,予備的な検討を進めたものの,何をもって正準形と呼ぶかという根本的な問題を解決するには至っていない.一方,安定化状態フィードバック制御の設計方法に関しては,多項式環上の加群に対するグレブナー基底を利用することで,望ましい参照モデルを実現する多項式型状態フィードバック制御則の存在条件と構成方法を明らかにした. 以上の研究において,主としてグレブナー基底に関わる計算には数式処理言語を利用しており,個々の問題に対する実装ツール開発が進みつつある.さらに,微分作用素の非可換環を利用して,多項式システムの解析やモデリングを行う手法についても研究成果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大域的可制御性に関して,対象は限定されるものの明確な条件を得ることができた.また,有限時間最適制御問題に関しては,推定問題など今後さまざまな方向への展開が期待される本質的な進展があった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,有限時間非線形最適制御問題の代数的解法を拡張していくとともに,推定問題などへの展開も進める.その場合,確定的最適化問題と確率的推定問題との関係が一つの鍵となる.そこで,確率的な意味での最適性も保証する問題設定を明らかにする.並行して,可制御性条件,安定性条件,状態フィードバック制御設計方法の拡張にも取り組む.たとえば,観測出力の多項式で与えられる静的出力フィードバック制御則の設計や,フィードバック制御の双対としてのオブザーバ設計などが有望な研究課題として上げられる.これらの研究の過程で作成する数式処理プログラムは,できるだけ汎用性の高いものとし,今後,利用しやすいパッケージとして整備することも視野に入れる.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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