本研究は、将来の月面構築物の主要材料として期待される『水の不要なルナコンクリートの製造法』の様々な可能性を実験的に検証し、それらの材料の評価により月面構造部材の設計システムの確立を目指した研究である。このため、本研究では3年計画の研究計画を立案し、初年度はルナコンクリートの製造手法に関する検討を中心に行い、次年度では最適なルナコンクリートの月面環境下での物性評価に関する研究を行った。最終年度では、開発されたルナコンクリートを用いた月面構築物の設計システムの構築に関する検討を行うものである。 最終年度の実験では、追加実験とともにルナコンクリートの製造システムに関する検討を行った。追加実験で得られた研究成果は、1)月面に多く存在するレゴリスのような粒度の小さい粉体を骨材に対して適切な配合で加えることによって強度の増加を図ることができること。2)月面に存在する各種金属による金属短繊維(鋼繊維、炭素繊維など)はルナコンクリートの強度改善効果を図る上でとても有効であることが明らかとなった。 さらに最終年度では、主として月面構築物の設計システムの構築に関する検討を行った。前年度までの研究成果から、『水の不要なルナコンクリートの製造』は可能であり、比較的小型のコンクリートブロックの製造が現実的であることが明らかになった。そのブロックは硫黄ブロックであり、バサルトブロックである。これらの小型ブロックを用いて、月面において舗装、橋梁、ドーム建築等を構築するためには古代ローマの建築システムの採用が最適であることを提案し、その原始的施工機械システムにより高度な構築物が比較的容易に構築可能であると考える。
|