研究課題/領域番号 |
24656279
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
後藤 芳顕 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90144188)
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研究分担者 |
海老澤 健正 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90332709)
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キーワード | 自己修復 / コンクリート充填橋脚 / 残留変位 / 局部座屈 / 水平2方向載荷 / 機能性材料 |
研究概要 |
本研究で開発するエネルギ吸収機能と残留変位の自己修復機能を併せ持つ自己修復型鋼製橋脚のプロトタイプを設計し,検証のための模型実験を実施する上で重要な基礎情報を得るために以下の項目について検討を行った. 1.中間ダイヤフラムの省略:ここで開発する鋼製橋脚では中間支圧鋼板を導入するが,この支圧鋼板を橋脚に剛結してダイヤフラム機能を持たせる必要があるか否かを検討するために,中間ダイヤフラムを省略したCFT橋脚模型の繰り返し載荷実験と数値解析を実施した.その結果,中間ダイヤフラムを省略してもコンクリート上面に設置したダイヤフラムのみで橋脚へ作用する圧縮力をコンクリートへ伝達することが可能であり,自己修復機能を発揮することが判明した.これより,中間支圧鋼板は橋脚に剛結する必要はない. 2.高軸力下の構造:実橋脚においてはほぼ上限である軸力比0.30の場合について,CFT橋脚模型の繰り返し載荷実験と数値解析により自己修復機能を検討した.その結果,この軸力比でも自己修復機能を十分発揮することを確認した.したがって,少なくとも軸力比0.30までであれば新たに開発する自己修復型鋼製橋脚には特別の構造的配慮は必要ない. 3.充填コンクリートの寸法効果:CFT橋脚では充填コンクリートのひび割れ発生や軟化挙動で生じる寸法効果により模型橋脚と実大橋脚では挙動が異なる可能性がある.したがって,自己修復型鋼製橋脚のプロトタイプモデルを設計しその効果を縮小模型による実験で確認する上での寸法効果の影響を精緻な有限要素モデルで検討した.その結果,寸法効果の影響は十分小さく,模型実験による結果は実大橋脚の挙動を表すと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では,H25年度にエネルギ吸収機能と残留変位の自己修復機能を併せ持つ自己修復型の鋼製橋脚のプロトタイプを設計し対応する縮小模型に対する検証実験を行う予定であった.しかしながら,上記もプロトタイプの鋼製橋脚をより適切に設計し,効率的な検証実験が行えるように,H25年度には必要な関連情報を得るためにさらなる検討を行った.これにより,実験行程にやや遅れを生じたが,自己修復型鋼製橋脚のプロトタイプ設計における経済性・確実性をより向上できたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
H25年度での検討により,開発予定であるエネルギ吸収機能と自己修復機能を併せ持つ自己修復型鋼製橋脚において,中間支圧鋼板を橋脚に剛結する必要がないこと,高軸力下での構造的配慮が必要ないこと,さらに,開発予定の自己修復型鋼製橋脚のプロトタイプの検証に用いる縮小模型の繰り返し載荷試験における寸法効果は小さく実大橋脚の挙動を十分予測できることが判明した.H26年度においては,上記H25年度の検討結果ならびにH24年度における中間支圧鋼板に関するパラメトリックスタディの結果を踏まえて,最適なエネルギ吸収機能と残留変位の自己修復機能を併せ持つプロトタイプの自己修復型鋼製橋脚を設計する.そして対応する模型供試体を製作し,実験により妥当性を検証する.H25年度に実施した追加検討により実験にやや遅れが生じたものの,プロトタイプの設計における経済性・確実性が向上したこと,実験手法の妥当性確認ができたことで,実験とともに設計手法に関する検討を効率的に進めうる見通しが立ったので当初の目的は達成できると考える.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では,平成25年度にプロトタイプの鋼製橋脚を設計し対応する縮小模型に対する検証実験を行う予定であったが,より正確に設計し, 効率的な検証実験を行えるように設計に必要な重要な情報を得るためのさらなる検討を行った.これにより,プロトタイプ橋脚の製作が平成26年度となったため,次年度使用額が生じた. 検証実験のためのプロトタイプ鋼製橋脚の供試体製作および実施に係る費用に主に充てる予定である.
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