2011年東日本大震災では東北から関東地方にかけて広域で多数の液状化が生じた。液状化発生箇所が多数かつ広域に分布しているために、多数の研究者で分担したが、その全ての現地調査を短期間に行うことは実質的には不可能であり、被害の全容が解明するまでに長期の時間を要した。このような経験を踏まえて、本研究では、地震前後に撮影した高解像度・マルチバンドの衛星画像を用いて、液状化により噴砂・噴水が発生した箇所とその範囲を精度良く判別する手法を開発することを目的とする。本年度は、昨年度に引き続き利根川流域で撮影した衛星画像の分析を行った。研究期間全体を通じた検討成果は以下のようにまとめられる。 1) GeoEye1による衛星画像の分析:地震前後に撮影した高解像度・マルチバンドの衛星画像を分析し、液状化により噴砂・噴水が発生した箇所とその範囲を精度良く判別する手法を開発した。液状化発生を地震直後に現地確認してある地点の情報をトレーニングデータとして用いることで、被災後の衛星画像から類似の地点を抽出した。 2) 現地調査: 1)で抽出した液状化範囲の整合性を現地調査で検証した。また、関連自治体へのヒアリングを行い、噴砂発生状況から実際の液状化範囲を推定した。 3) 室内実験: 実際の液状化箇所から採取した多数の噴砂試料を用いて、地表面に噴出した後の乾燥過程を室内で再現し、その際の画像スペクトルの変化をスペクトルメータで計測した。この結果を、上記1)の抽出条件および2)の現地調査結果と比較した。 4) RapidEyeによる衛星画像の分析:上記1)よりも解像度は劣るが撮影頻度が高く地震翌日の画像も得られている衛星画像を対象とした分析を行い、トレーニングデータの選定と類似箇所の抽出条件の設定を適切に行うことにより、数県にまたがる広域な範囲を対象とした液状化範囲の推定を比較的短期間で実施できることを示した。
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