研究課題/領域番号 |
24656287
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安福 規之 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20166523)
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研究分担者 |
大嶺 聖 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60248474)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 風食・水食 / 土砂流出・侵食 / 不飽和浸透 / リスク評価 / 適応策 / 国際情報交換(モンゴル) |
研究概要 |
本研究では、気候変動に伴って、気象特性の形態が大きく変化することを想定し、亜熱帯化先進地である沖縄で顕在化している赤土等の土砂流出・侵食問題や風食により砂漠化が進行している大地に焦点をあて、水食と風食の連動による侵食機構を解明し、土砂流出の新たなリスク評価手法を提示し、土砂流出・侵食を伴う災害に対する適応策を持続可能な形で実施するためのシナリオを提示することを目指している。その中で、平成24年度に実施した研究の成果を項目ごとに示すと以下の通りとなる。 1.風食と水食を連動させた土砂流出・侵食特性の解明:1)現状の把握:過去の研究を整理し、現状の把握に努めた。特に土壌損失量の評価手法に関する研究のレビューを行った。2)室内模型実験の実施:現有する降雨装置を改良し、水食と風食の連動による流出・侵食特性を把握するための風洞型の模型チャンバーを試作した。試作した風洞実験装置の性能と機能を評価するためのキャリブレーションを行った。3)影響要因に着目した土砂流出特性の明確化:風速と土壌損失量の関係、含水比-土壌損失量の関係に着目し,予備的な実験を行い,土粒子径と含水状態に関係した風食抵抗性に関する基礎的なデータの取得を開始した。 2.統計的・力学的手法を組み合わせた土砂流出・侵食量予測モデルの構築:表層地盤の粒状性を統計手法を用いて評価し、また、流出限界の土粒子径を微小粒子間の力学的なつり合いに基づいて導いた。 3.50-100年後の気象・ 社会経済シナリオの沖縄地区へのダウンサイジング:全国規模で示されている、気象シナリオを沖縄地域にダウンサイジングし、50~100年後を想定したリスク評価に資するための外的要因、特に降雨特性について分析し、想定されるシナリオによって結果が異なることを示した。加えて,モンゴル南部での風食等による土地劣化に関する情報収集を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画の中で,1)風食と水食を連動させた土砂流出・侵食特性の解明のための現状の把握は概ね予定通り行えているが,水理学的および地盤力学的アプローチでの方法の分類は次年度に行うこと,2)室内模型実験の実施については,現有する降雨装置を改良し,水食と風食の連動による流出・侵食特性を把握するための風洞型の模型チャンバーを試作した。結果として,その試作と機能の評価と改善に多くの時間を要したものの,来年度,実験を体系立てて行う基盤的環境は整えられたこと,3)影響要因に着目した土砂流出特性の明確化については,予備的な実験にとどまり,本格的な実験は来年度行うこととしたこと,また,統計的・力学的手法を組み合わせた土砂流出・侵食量予測モデルの構築については,表層地盤の粒状性を統計手法を用いて評価し、また、流出限界の土粒子径を微小粒子間の力学的なつり合いに基づいて導いており,それを活かして風食の影響をどのように取り込むかは,来年度のテーマとしたことなどから総合的に判断し,「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、昨年同様,以下の点に留意して進めていきたいと考えている。まず,1.昨年度概ね順調に進展がみられることから、当初の研究計画に沿って研究を実施することを基本とする。ついで,2.昨年度,試作した風洞実験装置を活用した本格的な実験を開始する。特に,砂質系と粘土系地盤の含水比-移動限界風速に着目して風食と水食の連動性が把握できるような系統的な実験を推進したい。また,3.予測モデルの水理学的なアプローチと地盤工学的なアプローチによる研究事例を整理し,新たな方向性を考察したい。加えて,4.沖縄県の技術者およびモンゴルの研究者と連携して,現地での土砂流出・侵食特性の現状を把握するための情報を収集し,課題設定の合理性などを検証したい。さらに,5.既に提案している土砂流出予測のための統計的・力学的手法を発展させて風食の影響が反映できるよう努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策と関連して,まず,試作した風洞を利用した室内実験による基礎データの蓄積に必要な消耗品と測定装置の購入に研究費を充てる。また,学生の実験支援を予定しており,その謝金として使用する。次に,風食と水食を連動した土砂流出・侵食量予測モデルの構築と適用に関連して,研究打合せを数回行うことを予定しており,そのために研究打合せ旅費としても使用する予定である。加えて,土砂流出に関する現地での検証実験の計画および実施に関連して,沖縄への出張旅費として使用する。さらに,年度内に数回の学会発表旅費として使用する。
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