本研究では,蛍光X線分析法を用いて,土砂移動の把握を試みることを目的とした.前年度までに,約50㎞に及ぶ表浜海岸における海浜の堆積・侵食状況調査結果と化学元素含有量の空間変化の分析,豊川河口干潟上での土砂移動追跡結果と化学元素含有量の時間・空間変化の分析から,蛍光X線分析による沿岸域における土砂環境の調査・把握の可能性を確認した. 本年度は,土砂動態と元素含有量変化の関係を明らかにするために,海浜砂の特性(粒度,磁性,鉱物組成,色)と海浜砂から検出される化学元素情報(種,含有量)の関係を分析した結果,表浜海岸の海浜砂においては,粒径が細かい成分ほどFe(鉄)などの金属元素の含有量が多く,その結果とて磁性が強いこと,粒径が大きくなるほどK(カリウム)の含有量が多くなることなどが明らかとなった.また,2次元造波水路において現地海浜砂を用いた移動床実験を行い,土砂移動に伴う地形変化過程とそれに伴う化学元素情報の変化の関係を調べた.土砂の移動形態(掃流,浮遊)によって輸送される元素(=海浜砂に含まれる鉱物種)が異なり,短期的な地形変化調査には,移動形態に留意した調査が必要であることが明らかとなった.本実験では,局所的な底面形状(特に地形勾配の変化)によって含有量が大きく変化していることが示されたが,対象範囲が大きい現地調査へ適用するためには,XRF分析の大域的な特徴の把握が必要であることが今後の課題である.
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