研究課題/領域番号 |
24656297
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山田 正 中央大学, 理工学部, 教授 (80111665)
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キーワード | 都市流出モデル / CommonMP / 時空間分解能 / ヒートアイランド / 雨水流出抑制 / 都市水文観測 / 雨水貯留 |
研究概要 |
1)都市流出モデルの構築と適用方法に関する検討を行った.具体的には流出計算の高精度化を図るため,集中型モデルに改良を施し,分布型のモデリングを行った.これにより,水文データの空間分布をより詳細に考慮できるようになった. 2)構築した流出モデルは水循環解析の共通プラットフォームであるCommonMP上にて動作可能となるようにプログラムを開発した. 3)降雨データ及びパラメータの時空間分解能が流出計算に与える影響を検証した.降雨特性と流出モデルの分解能が流出計算に与える影響を定量的に評価することが可能となった. 4)雨水貯留対策の1つとして提案している屋上貯留の効果を検証するべく,実証実験を行った.メンテナンスフリーで管理できる新素材セラミックスを都心部のビルの屋上に敷設し雨水流出抑制効果を検証した(実証実験は継続中).各種気象条件の違いとセラミックスによる屋上貯留の熱環境緩和効果の関係を検証するため,上述の観測サイトにて継続的な実証実験を行った(実証実験は継続中).観測サイトは1級河川神田川流域内のビル屋上であり,表面温度,表面から50cmまでの気温鉛直分布,日射量,熱流量と風向風速,雨量等を観測している. 5)上述の4項目に関連して,雨水の有効利用に関して,新たに雨水循環散水による瓦屋根の表面温度変化に関する検証実験を行った.循環散水により積雪地帯の屋根面の表面温度を管理することで,屋根面への積雪防止効果がどの程度見込めるかの検証を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)流出計算の高精度化を図るために,集中型モデルを分布型モデルに改良した.都市流出モデルの構築と適用方法に関する検討を行った結果,水文データの空間分布をより詳細に考慮できることがわかった.今後は構築した流出モデルの検証を継続するとともに,適用流域を増やし流域間での比較検討を行う. 2)構築した流出モデルを用いて,都市域の流出計算を行い,降雨特性と流出モデルの分解能が流出量に与える影響を明らかにした.モデル構造の選定は重要であり,市街化率や土地利用形態,雨水流出対策施設の効果等,流域特性の影響は大きく,それらを見極めてモデル構造を選定する必要性を改めて認識するに至った. 3)構築した流出モデルで簡易的に流出計算を行えるプログラム(ソースコード)を作成した.これにより,水循環解析の共通プラットフォームであるCommonMP上での動作を可能とした, 4)雨水貯留対策の1つとして提案しているメンテナンスフリーの新素材セラミックスを使用した屋上貯留の効果を実証実験にて検証した.ヒートアイランド効果及び雨水流出抑制効果が見込めることがわかった.また,地下貯留施設の新設等の大規模な対策に比べて,B/Cが大きいという結果を得た. 5)循環散水による瓦屋根表面温度変化の検証を行った結果,循環散水を行うことにより,本来積雪するような降雪量が観測されたとしても屋根に雪が積もることがないという結果を得た.本実験では,散水によって積雪量を減少もしくは積雪させない事に成功した.一方で,循環散水に使用する水の温度低下や気温の低下により屋根表面が凍結し,散水ノズルまで凍ってしまう等の問題も生じている.今後は,気温と散水温度,凍結条件などのデータを分析することにより,これらの関係性を明らかにしていく必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
1)構築した流出モデルによる流出解析は流域事例を増やして継続して検証する. 2)屋上貯留による雨水流出抑制効果の検証も継続して行う. 3)屋上貯留による熱環境緩和効果の検証も継続して行う. 4)循環散水による屋根表面温度のコントロール実験を継続して行う.25年度は冬期観測を行い,循環散水の積雪量調節効果のみの検証であったが,26年度(以降)は夏期観測により,屋上貯留と同様に熱環境緩和効果の検証も行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は冬季観測を中心として行ったことにより,予定していたよりも旅費の執行が少なかった. 本年度は夏季観測を中心として行い,屋上貯留と同様に熱環境緩和効果の検証も行う予定である.このことから,旅費及び観測データ整理のための人件費及び観測機材の消耗品として使用する予定である.
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