研究課題/領域番号 |
24656300
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
金 利昭 茨城大学, 工学部, 教授 (40205050)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 街路照明 / 防犯灯 / 居住環境 / 交通安全 |
研究概要 |
1.既存研究と照明関連企業へのヒアリング調査を踏まえて照度基準を考察し、以下の課題があることがわかった。(1)照明基準にある照度は目安にすぎず拘束力がないため、照明基準を満足するのは東京23区を含めわずか数市にとどまりその他は照明基準に従わず独自の基準を設けるか、または設置基準を定めていない。(2)照度は交通量と地域区分のみで分けられており、田畑や住宅地などの多様な沿道に対応できていない。(3)照度測定方法に厳密な規定は無く、測定者によっては同条件で得られた結果ではないため正確な比較ができない可能性がある。(4)照明基準の「照明の効果」における挙動の判断水準が曖昧である。 2.街路照明の設置と維持管理の状況及び照度の関係を把握することを目的として、茨城県日立市にあるH住宅団地で照度の実態調査を2012年7月に行った。この結果から、対象の住宅団地がある日立市は独自の設置基準を持ち、照明基準は反映されていないことが明らかとなった。また、照明基準を満たす場合でも照明の効果が得られない区間が存在すること、逆に照明基準の照度値を下回り照度レベルが非常に低くても明るいと感じたりする場合があり、このことから視覚が捉え感じる明るさと照明基準にある「照明の効果」の指標との間には乖離があることが示唆された。 3.以上の調査から、照明基準にある照度に、そのときの効果である「4 m先の人物の挙動がわかる」は対応していない可能性があることがわかった。この不一致を明らかにすることを目的に検証実験を行った。照明基準にある照度値とその「照明の効果」は「4 m先の人物と目線を合わせられない・持っている絵が見えない」を見えない条件とした場合、一致しないことがある。このことから照明基準を満たす街路であっても見えない区間があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的に対応させて、得られた成果は以下の通りである。 (目的1)街路照明の制度・実態を把握する。これに対して、街路灯・防犯灯等の夜間照明の指針・設置基準とその運用状況を、国や自治体の資料収集や照明専門家へのヒヤリングにより整理し、問題点・課題を明らかにした。(目的2)照明機器の規格・種類と特徴を整理する。これに対して、街路灯・防犯灯の規格・種類と特徴を整理した。しかし、交通手段の夜間対応機器の規格・種類と特徴については、一部の整理に止まった。(目的3)街路照明の実態と問題点を把握する。これに対して、日立市内の団地における夜間照明の照度を計測することによって明るさの実態を把握し、防犯・防災・交通安全から見た夜間照明の問題点・課題を抽出した。(目的4)簡易デジカメ「明るさ」計測システムを開発する。これに対しては、デジタルカメラを用いた簡易なデジカメ「明るさ」計測システムの開発を試みているが、カメラメーカーの専門的協力が不可欠な状況が判明し、現在専門家の協力を探っている。 夜間照明には、予想していた以上の問題点・課題があることが判明したため、照明基準にある照度とその効果が対応しているかを確認するための検証実験を行い、照明基準を満たす街路であっても見えない区間があること等の有用な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.住宅団地の夜間街路照明の要件と既成の照明機器のマッチングを検討する。ここでは、防犯・防災と交通安全から見た街路照明の要件を明確にする。 2.住宅団地における新しい夜間街路照明タイプを提案する。ここでは、現在の街路灯・防犯灯に門灯・玄関灯を加えたものを基本形と考え、これに防犯灯あるいは足元灯を付加したものを新しい照明システムとして想定する。防犯・防災と交通、通行者と居住者という視点から有効性を評価する。 3.防犯・防災・交通安全に資する新しい街路照明システムを提案する。ここでは、防犯・防災と交通安全に資する新しい街路照明システムを提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
想定する新しい照明システムの有効性を評価する実験機材と被験者への謝金として使用する。
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