研究課題/領域番号 |
24656302
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇野 伸宏 京都大学, 経営管理研究部, 准教授 (80232883)
|
研究分担者 |
倉内 文孝 岐阜大学, 工学部, 教授 (10263104)
塩見 康博 立命館大学, 理工学部, 講師 (40422993)
嶋本 寛 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90464304)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 交通工学 / 交通事故 / 高度道路交通システム(ITS) / 車両軌跡推定アルゴリズム / ミクロ交通シミュレーション |
研究概要 |
24年度は定点観測個別車両データに基づく交通事故多発区間における交通流特性の把握,および,個別車両データに基づく車両走行軌跡復元・推定アルゴリズムの開発を行ってきた.まずは提案アルゴリズの妥当性を検証するためのフィールドデータの収集を,阪和自動車道,名神高速道路などで実施するとともに,個別車両データを含む各種データを一元管理するためのデータベースを構築した.交通事故発生リスクに影響を与える要因について共分散構造分析などの統計解析を行い,定量的に因果構造の把握を試みた.その結果道路線形・構造は交通状態に影響を及ぼし,交通状態は事故発生に有意な影響を及ぼすことから,道路線形・構造も間接的に事故発生に影響することを確認した. 2つめのテーマとしては,個別車両データに基づく車両走行軌跡推定アルゴリズムの構築を行った.具体的には,精度検証用データセットの整理を行い,その後,本提案手法において中核をなす車両マッチング手法の高度化,及び走行軌跡補完のため,カルマンフィルターによるパラメータ更新を組み込んだミクロ交通流モデルの構築に取り組み,最終的に個別車両データから車両走行軌跡を推定する体系的枠組みの構築を試みた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,次の3テーマに2カ年で取り組む予定である.1)ループコイル式の車両感知器により収集される,定点観測個別車両データに基づき,交通事故多発区間における交通流特性を把握するとともに,事故発生メカニズムに関する仮説を抽出する.2)個別車両データに基づき道路線形に整合する車両走行軌跡を復元・推定するアルゴリズムを開発し,それを活用して交通事故発生時における交通状況を推定するための方法論を確立する.3)交通事故発生要因を解明し,その緩和に向けたハード的・ソフト的交通事故対策案を提案し,評価する. このうち,24年度は1)および2)の一部に取り組むこととしており,研究実績の概要でも記述の通り,100%とは言えないが,1)および2)の2テーマに概ね7~8割は実施されており,25年度も継続的に取り組むことで,ほぼ当初予定通りの成果が現時点では見込むことができるので,概ね順調と判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
25年度は,テーマ2の後半とテーマ3に取り組むとともに,研究全体の総括を行う.まず,テーマ2の後半として,昨年度に構築した車両走行軌跡推定アルゴリズムを実観測データへ適用し,その推定精度検証を行う.この際,推定精度を向上するため,適宜アルゴリズムの修正,及び援用するミクロ交通流モデルの再検討を行う.また,24年度より継続して収集していた車両感知器による個別車両データの内,当該区間において交通事故を観測した際のデータを選別するとともに,事故調書データ・CCTVカメラ画像データなどと照合し,個別車両データ中の事故車両の特定を進める.加えて,事故発生時には,当該車両は対象区間上流側の車両感知器では観測されるものの,下流側では観測されないとの特性がある.一方で,車両走行軌跡推定アルゴリズムでは上下流地点で車両が同定されている必要がある.このギャップを埋めるための合理的な方法について検討し,事故解析に適用可能とするための車両軌跡推定アルゴリズムの拡張を行う. テーマ3として,テーマ2において構築した車両軌跡推定アルゴリズムを実際の交通事故発生時のデータに適用し,事故発生状況における車両走行軌跡を復元する.この所作を,観測されたすべての交通事故を含む個別車両データに適用し,復元された軌跡データに基づいて交通事故発生要因の解明,交通事故を誘引する前兆現象を特定する.また,得られた知見に基づき,インフラ側,及び交通管制側の両側面から交通事故を予防,発生件数を抑制するための方策について検討する. なお,本研究課題を学術,実務の両面から有為なものとするため,研究代表者,分担者による研究打合せを行い,内部チェックを行うとともに,研究フィールド提供者としての西日本高速道路(株),データ収集協力者としての住友電気工業(株)との共同研究体制の枠組みを活用して,研究内容の確認,進捗管理を行う事とする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
25年度の研究費は,主に研究代表者,分担者で進捗報告・管理を行うための打合せの旅費,成果報告のための学会参加旅費および参加費,データ解析補助のための謝金および収集データや分析結果の保存などのためのメディアの購入などから構成されている.
|