研究課題
1年目はクイーンズランド大洪水と東日本大震災の直接被害を比較した。死傷者数はもちろん極端に違うが、クイーンズランドの被害も、数百年に一度の大規模災害であり、連邦政府が臨時増税をするなど、十分比較の対象になることがわかった。日本の復興組織体制全体とクイーンズランド復興庁の組織体制を比較し、その利害を検討した。2年目は復興に対する中央政府、地方政府、企業、個人の責任と費用負担を検討した。資金の流れや個人補償の額の比較は詳細がわかりにくいため、クイーンズランド復興庁に直接ヒアリングすると共に、クイーンズランド大学で災害復興に携わる研究者との情報交換を行い、文献で十分わからなかった点の解明を進めた。日豪の違いは以下のようにまとめられる。1)最大の違いは日本の復興庁が国の直轄で組織されたのに対し、オーストラリアでは被災地に近い州政府に組織されている点である。2)復興計画の作成主体が日本では市町村に任されたのに対し、クイーンズランドでは各省庁に連なる6つの組織が復興計画の策定に大きく参加している。3)また、市町村の計画策定に際してクイーンズランドは総務省のような組織が積極的に援助しているのに対し、我が国では国や県の介入を著しく制限した。4)分野間の調整は一般に非常に難しいが、クイーンズランドでは分野横断計画(Cross-cutting)が明確に位置づけられている。5)最大の違いは法整備の違いかもしれない。日本では復興庁の設立に11ヶ月を要した。一方クイーンズランドでは復興庁の設立から、人材の登用、復興庁職員の給与の支払い責任を含めて法制化されていたため、災害後わずか1ヶ月で復興庁が設立された。6)個人に対する補償で非常に大きいのが保険制度の違いである。オーストラリアでは地方自治体と個人が共同で保険費を負担する災害保険は半ば強制であり、これにより個人被害の多くが保険で対応された。
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Proceedings of the Eastern Asia Society for Transportation Studies
巻: Vol.9 ページ: pp1-14
Journal of JSCE
巻: Vol.1, No.1 ページ: 490-506
DOI::http://dx.doi.org/10.2208/journalofjsce.1.1