本研究では、木材加工の分野で研究開発が行われている圧密加工技術を利用して、金物を使用しない木材接合の開発を模索している。特に圧密木材が水分や熱により変形を回復する現象(以下、復元とする)を利用した木材接合部の開発について取り組んでいる。 本年度の研究では、圧密前処理、変形固定時の乾燥温度、強制復元処理時間の違いで、変形固定解除後に寸法変化が安定し、接合具として利用した際に高い復元応力および寸法変化が期待できる圧密木材の製作方法の検討を行い、また長期間にわたる乾湿の繰り返しで、圧密木材の応力および寸法の変化を調べるための実験を行った。その結果、以下のような知見が得られた。4サイクル終了後、圧密前無処理で圧密加工後、40℃で乾燥させながら変形を固定し、自然復元させた試験体が乾湿の繰り返しにより、応力および寸法変化で上昇方向の変化を維持していることが分かった。これに対して、圧密前処理、変形固定時の環境温度に関わらず、スチーム5分の強制復元処理を行った試験体が乾湿の繰り返しにより応力は低下し、寸法変化は縮小方向に変化するものは無かったが寸法変化の増加率が少なくなる結果となった。以上のことから、込栓や鼻栓などを打ち込んだ後に初期剛性の向上を期待する接合部に圧密木材を使用する際、乾湿が繰り返されることで応力および寸法の変化が増加する、圧密前無処理で圧密加工後、40℃で乾燥させながら変形を固定し、自然復元させる圧密木材が最も適していると考えられる。
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