研究課題
大スパン構造に用いられる梁型立体ラチス構造の動的崩壊および限界変形に到達する地震動の入力加速度を、静的な荷重変形特性から推定する研究を実施した。具体的に用いる主な手法は,速度応答スペクトルによるモーダルアナリシスと静的弾塑性解析である。静的弾塑性解析では構造物の静的吸収エネルギーとエネルギー吸収特性などの情報を得る。本課題では,特に終局耐震性能に及ぼす静的安全率の効果を明らかにすることを主目的とした。静的安全率は構造物の初期降伏荷重,座屈荷重などの固定荷重に対する比率を表しており、固定荷重が動的崩壊などに影響すると考えたからである。その結果、平成24年度には圧縮降伏して脆性型の静的弾塑性挙動を示すモデルは静的安全率が大きくなるに従って動的崩壊地震動レベルは上昇すること,引張降伏して靭性型となるモデルでは入力波,静的安全率に関わらず上昇が見られないことが分かった。さらに脆性型の動的応答時の上昇効果を詳細に調べた結果,塑性変形による消費エネルギーに寄ることが確認できた。そして最終年度(平成25年度)には水平地震動に対する予測精度について検討するために柱付きの梁型構造を対象とした。その結果,水平地震動を受ける場合は左右の繰り返し応答になりエネルギー吸収が高くなるので安全側の評価となることが分かった。しかし,最終的に欲しい動的崩壊および限界変形に到達する地震動の入力加速度について,構造物の静的吸収エネルギーを考慮するだけでは精度が良くないことが判明した。そこで静的弾塑性挙動のエネルギー吸収特性と弾塑性地震応答時の入力加速度の増分関係を調べた結果,強い相関関係が見られたので予測法の修正を行った。以上の研究成果により,構造物の静的弾塑性解析によって得られるエネルギー吸収特性を用いることによって,時刻歴応答解析を実行することなく限界指標に至る入力加速度が推定できるようになった。
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Hindawi Publishing Corporation, Journal of Structures
巻: Vol.2013 ページ: 14