研究課題/領域番号 |
24656328
|
研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
朝山 秀一 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (50120100)
|
研究分担者 |
前 稔文 大分工業高等専門学校, 都市・環境工学科, 准教授 (90318171)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | アルゴリズミック・デザイン / 空間構造 / 風紋 / 地形 / 河床 / 構造形態創生 |
研究実績の概要 |
1.プログラムの開発 平成25年度までに、風紋の形成理論に基づく空間構造を生成するプログラムを拡張して、正弦波で近似できる砂丘の上に風紋を重ねて得られる形態について骨組解析できるプログラムを開発したので、平成26年度は、研究室で開発した別のプログラムに手を加えて、正弦波の上に、風紋を理想化した小さな正弦波を重ねて得られる形態について骨組解析ができるプログラムを開発した。これにより、風紋のような非線形物理学により得られた形態とそれを線形物理学の正弦波で理想化した形態の力学的性質を比較することが可能になった。 2.プログラムに基づく研究成果 平成25年度までの研究で、一方向風により形成される風紋を適宜拡大して、上に凸な正弦波半周期分の形態で近似される砂丘に加えた形態が、鉛直荷重に対して力学的に優れていることが判明したので、この成果を、2014年9月ブラジリアで開催された国際会議IASS2014 (International Association for Shell and Spatial Structures)において、研究分担者前稔文、高橋清紀(前東京電機大学大学院生)と連名の論文で発表した。さらに、平成26年度開発したプログラムを用いて、風紋と砂丘の両部分を正弦波で表現した構造と上述の空間構造を比較した結果、前者が最大変形で33%小さいことが判明した。また、同年12月、日本建築学会情報・システム・利用・技術シンポジウムにて、河床変動理論を用いた凹凸のある空間構造の基礎的力学特性と応力分布について発表した。本研究からスピンアウトして発展した研究ではあるが、上記IASS2014にて、高木関数で自然界の形態を模したFractal Shellの力学的性質について、Mario Sassone教授(トリノ工科大学)、Iasef Rian 氏(同大学大学院生)と連名で論文を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市販の構造プログラムをソルバーとして使ったので、面材を扱う部分がソルバーとして機能追加されなかったために、解析モデルは全てラチスシェルとなった。この点が不十分な部分であるが、風紋と砂丘を組み合わせた空間構造の形態の中に、力学的に優れたものを見出すことができただけでなく、それを2種類の正弦波で理想化した空間構造が提案でき、それが変形で30%、軸応力度で66~73%優れていることが判明し、さらにそうした成果をIASSの国際会議で発表できた。さらに河床変動理論を用いた凹凸のある空間構造の基礎的力学特性を明らかにできた。また、予定外ではあるが、本研究テーマからスピンアウトし、自然の地形ではなく、自然の形態をフラクタル理論で応用した空間構造(Fractal Shell)について、イタリアのトリノ工科大学のMario Sassone教授、Iasef Rian大学院生と共同研究できたことなどを考慮すると、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究については、平成27年度内に総括して報告書を作成する予定である。また、平成26年度の成果の未発表部分は、本年12月の情報日本建築学会情報・システム・利用・技術シンポジウムにて発表することで、本研究を推進し、完了する予定である。 本研究で得た知見に基づき、次なる発展的段階の研究として、風や水などの流体によって形成される形態に基づく空間構造が、風に対して力学的に優れているのではないかとの発想で、平成27年度より流体解析を行いそれらの風圧分布を求める研究を開始したが、この研究も学術研究助成基金助成金「自然界の流体が作る形に基づく空間構造の耐風性と形態創生」(課題番号15K14067)を受けることができたので、本研究は、その礎として役割を果たせたものと考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究は、概ね終了したが、平成26年度末にまとめた研究成果の発表と最終報告書の作成作業が残ってしまったため、そのための費用を次年度に繰り越しとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究成果は、平成27年12月に開催される情報・システム・利用・技術シンポジウムにて発表する予定である。また、その成果を含めた報告書を年度内に作成する。
|