研究課題
最終年度に実施した研究では、砂丘に風紋の形状を加えた空間構造モデルに対して、昨年度までに求めた力学的に優れた形態の中で最も剛性が高いモデルと、それぞれの形状を正弦波に置き換え形態を規則的にしたモデルについて、自重と積載荷重2kN/㎡に対する変形と応力の特性を比較した。その結果、形状が規則的な後者の方が、フレームとブレースの最大応力度比で、66%、73%の値となり、構造として優れていることが明らかになった。また、前者のような不規則な形状でも、応力度比で30%程度の増加を許容すれば、設計可能であることが判明し、その成果を日本建築学会コロキウム構造形態の解析と創生2015で発表した。また、その形状を3Dプリンターで試作した。研究期間全体を通じて実施した研究の成果については、以下の通りである。風紋と砂丘の形成理論および河床変動理論を用いて、凹凸のある曲面構造をラチスシェルの形式で生成して、重力(自重と積載荷重)に対する基礎的力学性状を解明するために、市販の立体構造解析プログラムを自作プログラムで呼び出し、構造のジオメトリの変化に対し、変形と応力を求めるシステムを作成した。これらに基づき、風紋と砂丘の形成理論を用いた空間構造を解析すると、概ね上に凸な半周期分の正弦波に風紋の凹凸を加えた形態が構造的に優れていることが明らかになった。また、河床変動理論に基づく屋根構造の場合、形状の変化の大きいモデルほど最大曲げモーメントや変形が小さく、構造的に有利な形状であることが分かった。以上の成果は、平成25年度日本建築学会の大会(2編)、平成26年度同大会(2編)、コロキウム構造形態の解析と創生2013および2015各1編、IASS2014(1編)にて発表した。なお、研究経費上は別扱いであるが本研究がフラクタルを用いた空間構造の研究を誘発し、トリノ工科大学との国際共同研究をもたらした。
上記共同研究は、本研究に誘発されたもので、フラクタルを用いた自然形態に基づく構造体という別の研究であり、Torino工科大学Mario Sassone教授、Sharjah大学Iasef Md Rian准教授、大分高専の前稔文准教授との個人的信頼関係に基づき別途経費で行っいる。しかし、研究チーム設立のきっかけには、本研究成果のIASSでの発表とRian氏学位論文の副査の引受けが大きな役目を果たした。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Automation in Construction, ELSEVIER
巻: 66 ページ: pp.43-58
ISSN: 0926-5805
Proceedings of the IASS WORKING GROUPS 12 + 18 International Colloquium 2015
巻: pap_15T-19 ページ: pp.1-8 CDR