研究課題/領域番号 |
24656330
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
持田 灯 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00183658)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 樹木Canopy / 都市風環境 / CFD / BIM / モデュール化 / 樹木密度 / 乱れの長さスケール / LES |
研究概要 |
(1)従来申請者等が長年手がけてきたLESに基づく解析プログラムを用いて、葉の抵抗を記述する工学的Canopyモデルを組み込み、高分解能のメッシュ(計算メッシュスケール≪樹木スケール)で植生層内の乱流場の性状を高精度に予測する手法を開発した。続いて、LESの結果から乱流渦の特徴的長さスケールを推定する新たな方法を提案した。 (2)連携研究者の手代木((財)都市緑化技術開発機構)と研究協力者の大槻((株)雪研スノーイーターズ)の協力の下に、北海道札幌市郊外のあいの里地区や東北大学片平キャンパスにおいて、従来の研究データの蓄積が乏しい、樹林と樹木単体の中間的な密度の都市内樹木群周辺の環境を対象とする測定を行った。 (3)樹木のモヂュール化に先立ち、連携研究者の手代木と研究協力者の小林(大成建設設計部設計本部)と共同で、実際の都市環境設計における樹木に係る選択肢(高木、低木、広葉樹、針葉樹、常緑樹、夏季・冬季の落葉樹等)を分類、整理した。また、都市緑地法第34条(植栽時の実際の水平投影面積の規定)や第60条(成長時を計画・予定した植物の水平投影面積の規定)との整合性も考慮し、樹種に加え、植栽時用、成長時用のモヂュールも用意する等、実際の環境アセスメント時の目的、用途を考慮して、作成すべきモヂュールのタイプを決定した。 (4)(3)で分類した選択肢に応じて解析条件の設定を変更した条件に加え、樹木密度を変化させた高分解能のLES解析を行い、実測で取得するのが難しい、より詳細な植生層内の乱流特性量(乱流エネルギー、粘性消散率、乱れの長さスケール等)の空間分布のデータを取得した。次に、本研究で新たに開発する実用的モデル(レイノルズ平均の概念に基づく)に含まれる数値係数の樹木群の密度、形状等の変化応じた変化を前述の解析より得られたデータを用いて同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画にあった、実際の都市環境設計における樹種の選択肢(高木、低木、広葉樹、針葉樹、常緑樹、夏季・冬季の落葉樹等)を変更した解析にとどまらず、樹木の配植密度を変化させた解析まで行い、樹木がまばらに点在する様な状況下で、樹木の内部で形成される小さな渦と樹木間で形成される大きな渦が混在する特徴的な流れ場の乱流特性量(乱流エネルギー、粘性消散率、乱れの長さスケール等)の空間分布を取得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度 (1)前年度に引き続き高分解能のLESにより樹木群の密度、形状を系統的に変化させた解析を行い、レイノルズ平均型のモデル化手法に基づく実用的モデルの解析結果と比較し、実用モデルに含まれるモデル係数の最適値を同定し、実用的なCFDサブモデルの開発を行う。(2)都市に比較的多く点在する樹木単体や森林のあいだの中間的な規模・密度の樹木群を対象とした追加の野外実測を行い、解析結果との比較のためのデータを補充する。実測は連携研究者の手代木と共同で行い、場所は千葉県袖ヶ浦市内の圃場の予定である。(3)これとともに、樹木の密度、形状ごとのモデル係数を、設計における樹木に係る選択肢(高木、低木、広葉樹、針葉樹等)と対応させ、BIM連携型CFD解析のための入力モヂュールを試作する。さらに、これを汎用の流体解析ソフト(Flow Designer)に搭載し、実際の市街地の植栽計画の実例への応用を通じて改良を加える(この段階では、未だ一般ユーザーには成果は公表しない)。 平成26年度 (1)2006年に申請者等が実施した仙台中心市街地における温熱環境実測の測定領域を対象として、本研究成果を用いた数値解析を行い、実測で得られた諸データとの比較により精度検証を行う。必要であれば、モデル係数の再チューニング等により精度の改善を図る。(2)さらに、本研究で開発したBIM・CFD連携システムを用いた環境設計の有効性を確認するために、本システムを用いて①樹木の配置変更⇒②環境予測⇒③再検討 のプロセスを数多く繰り返し、日射遮蔽と風通しを両立するための樹木配置の改善案の提案を行う。この過程で、設計者の立場からの改善点を検討し、都市環境設計ツールとして完成させる。(3)最後に、得られた最終成果を汎用の流体解析ソフト(Flow Designer)に搭載して一般ユーザーに公開し、成果の普及を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)実測に関わる研究経費 千葉県袖ヶ浦市内の圃場で測定を行うため、東北大学(仙台)からの測定器の輸送費、交通費、滞在費が必要である。・実測にあたり、測定補助者への謝金が必要である。測定器に関しては、現有の物理環境計測機器やデータ収録装置を使用するが、一部センサー類の消耗品、データ分析装置を新規に購入する。 (2)解析に関わる経費 詳細なシミュレーション、ケーススタディを実施するにあたって、現有のワークステーションで行うが、一部、高負荷のLES解析については、東北大学大型計算機センターのスーパーコンピュータ(SX-9)を利用する必要があり、その利用料、データ保存料が必要となる。CFD・BIM連携システム開発のため、汎用熱流体解析ソフト(Flow Designer)およびBIMソフト(Revit)のライセンス料、データ処理のためのファイルサーバが必要となる。 (3)成果発表・打ち合わせ等の旅費 研究成果を平成25年12月にインドのチェンマイで開催されるEight Asia-Pacific Conference on Wind Engineering (APCWE-VIII)に投稿予定であり、参加費、旅費が必要である。また、研究打ち合わせのため、仙台‐東京間の旅費が必要である。
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