研究課題/領域番号 |
24656330
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
持田 灯 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00183658)
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キーワード | 樹木 / 風速低減 / 乱流促進 / 乱れの長さスケール / LESデータ / 長期測定 / 密度・形状 / CFD入力モヂュール |
研究概要 |
(1)連携研究者の手代木の協力を得て、千葉県袖ケ浦の圃場において、都市に比較的多く点在する森林と単木の中間的な樹木密度の領域において周辺の風速や乱流統計量、さらに蒸散量や温湿度等の長期測定を行い、解析結果検証のための実測データを取得し、分析を加えた。また、周辺に樹木のない領域に単木の試験体を同時に設置し、樹木単木と群落の性状の比較も行った(測定は現在も継続中)。 (2)前年度に引き続き、高分解能のLESにより、密度、形状を系統的に変化させた解析を行い、Canopy 層に作用する抗力とCanopy内の乱流統計量の詳細な分布を算出し、レイノルズ平均型の実用的乱流モデルの解析結果と比較し、実用的モデルに含まれる数値係数の最適化を行った。Canopy層内の乱れの長スケールの算出に関しては、ダイナミック型のLESモデルで用いられる最小2乗法によるモデル係数設定法を援用した新たな方法を考案し、従来の研究では困難であった乱れの長さスケールの空間分布の直接比較を行った。そして、レイノルズ平均型モデルにおける乱れのスケールのモデル化の精度検証を行い、モデル化の普遍性を格段に向上させる新たな取り扱いを考案した。 (3)これとともに、樹木の形状やモデル係数を樹種ごとにモヂュール化した、BIM連携型のCFD解析のための入力モヂュールを試作した。さらに、これを汎用流体解析ソフト(Flow Designer)に搭載し、実市街地を対象としたケーススタディを通じて、実際の市街地における植栽計画への利用可能性という観点から改良を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
a)Canopy層内の乱流性状を正確に予測可能な実用的なモデルを構築する際の鍵となるのが、風上側の乱流渦が Canopy 層内で分解されるプロセスのモデル化であり、そのためにはCanopy層内における乱れの長スケールの減少を適切にモデル化することが不可欠である。これに関するモデル化の精度を検証するには、乱れの長さスケールの詳細な空間分布の情報が必要であるが、従来、そのようなデータは存在していなかった。本研究では、LESの結果からCanopy層内の乱れの長さスケールの空間分布を算出する方法を新たに考案し、各種条件下におけるその分布に関するデータベースを構築することが出来たので、実用的なCanopyモデルのモデル係数の直接的な同定が可能となった。これは当初の想定以上の大きな進展である。 b)当初は市街地内の樹林帯における1週間程度の測定を考えていたが、連携研究者の手代木の尽力により、千葉県袖ケ浦の圃場内に樹木の試験体を設置し、周辺に観測装置を常設することが出来たので、1年以上の長期観測を継続的に行うことが可能となった。これにより、様々な条件下のデータが習得されつつあり、これはモデル検証用のデータとして非常に貴重なものである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成25年度のLESデータを用いた実用的Canopy モデルの精度改善のための検討を継続し、より普遍性の高いモデルの構築をめざす。 (2)袖ケ浦の実測対象領域並びに2006年に申請者等が行った仙台市中心市街地(定禅寺通り)の風環境、温熱環境測定対象領域を対象として、(1)の成果を用いた数値解析を行い、精度の検証を行う。また、必要に応じてモデル係数の再チューニングにより精度の改善を図る。 (3)このモデルを汎用CFD解析コード(OpenFOAM)に搭載し、これを用いて、仙台平野の津波浸水域を対象に、津波で焼失した沿岸の防潮林の有無による風環境の変化の予測、及び防風対策の検討を行う。そして、これを通じて風環境の予測・計画への利用の容易さという観点からの改善点を洗い出し、設計用ツールとしての完成度を高める。
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