1)従来申請者等が長年手がけてきたLESに基づく解析プログラムに対して、葉の抵抗を記述する工学的Canopy モデルを組み込み、高分解能のメッシュ(計算メッシュスケール<<樹木スケール)で植生内の乱流場の性状を高精度に予測する手法を提案した。 2)千葉県袖ケ浦の圃場において単木と群落の中間的樹木密度の領域において、風速や乱流統計量、さらに蒸散量や温湿度の長期測定を実施した。さらに、2014年8月には乱流統計量(乱流エネルギー、乱れの長さスケール)、温湿度の空間分布の詳細な測定を実施した。得られた乱れの長さスケールから、樹木Canopy 層内では樹冠によって乱流渦が分解されていることを確認した。 3)物体群を解像した高分解能のLESにより、Canopy層に作用する抗力とCanopy層内の乱流統計量の詳細な分布を算出した。2014年度には、物体群を解像した流れ場で定式化されるε方程式と、Canopyモデルで想定する水平一様な流れ場で定式化されるε方程式の差に注目した新たな乱れの長さスケールの算出方法を考案し、物体群のアスペクト比がCanopy層の乱れの長さスケールの分布に及ぼす影響を分析した。そして、高分解能のLESの結果と物体群を実際には解像しないRANS型Canopyモデルに基づく実用モデルに含まれる係数設定法を検討するとともにその最適化を行った。 4)樹木の形状やモデル係数を樹種ごとにモヂュ―ル化した。2014度年には、この樹木モヂュ―ルを汎用CFD解析コード(OpenFOAM)に搭載し、RANS型の Canopy モデルに基づく解析により、東日本大震災の際の津波により防潮林が消失した仙台平野の農地を対象に、防潮林の有無が風環境に及ぼす影響の予測を行った。さらに、樹木モヂュールを汎用流体解析ソフトFlowDesingerで、ユーザーがライブラリから使用できるように変換を行った。
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