研究課題/領域番号 |
24656336
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山中 俊夫 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80182575)
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研究分担者 |
竹村 明久 大同大学, 情報学部, 講師 (70584689)
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キーワード | 嗅覚順応 / 応答関数 / 嗅覚モデル / 換気量 / 酢酸エチル / 体臭 / 木材臭 |
研究概要 |
大きく分けて3種類の検討を行った。一つは、従来用いてきた酢酸エチルを用いた嗅覚実験による、回復過程を含む嗅覚モデルの適用性に関する検討であり、二つ目は、実際の人体を使った体臭の評価実験におけるパネルの個人評価特性の検討と体臭の成分分析、三つ目は、実際の木材から発生する木材臭の順応過程における嗅覚モデルの適用性の検討である。 ①回復・再順応過程における臭気強度の時間変化特性と嗅覚反応モデルの適用性:順応後でも、無臭空気の曝露により嗅覚が順応状態から回復するものの、以前用いたパネルとは異なったパネルを用いたため、定数の値が異なることがわかった。また、パネルごとに、特徴的な順応パターンがあり、実験者の動作がパネルに心理的な影響を与え、評価に影響する可能性があることが示唆された。このことは、標準的パネルのモデル定数の設定とは別に、パネル別に対応したモデル定数の必要性を意味しており、今後のモデル開発に有益な情報が得られた。 ②各パネルの評価特性に関する検討と体臭の成分分析:体臭について、成分の定性・定量分析を行った結果、Butanol, Hexanal, 2-Ethyl-1-Hexanol, Nonanal,Decanal が検出された。また、同じパネルに体臭と酢酸エチルとを曝露したときの強度の時間変化特性の図から、臭気の種類に関わらず、同様の傾向が見られ、パネルの申告特性を減衰性と変動性の観点からグルーピングした。このことは、パネルの評価特性の考慮の必要性を明らかにしたものである。 ③木材臭の順応過程における嗅覚モデルの適用性の検討:ヒノキを用いた嗅覚の順応実験を行い、実際の木材臭を対象とした場合の順応過程への嗅覚モデルの適用性に関して検討を行った。しかし、木材から発生する臭気成分のばらつきと時間変化が非常に大きく、順応過程は確認できたものの、明確な結論を得ることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れているという理由は、申告される嗅覚強度の時間変化特性が、パネル(においを嗅ぐ被験者)によって、非常に大きくことなるということが、発覚したことである。これまでは、のべ13名のパネルを用いた酢酸エチルに対する順応特性について検討を行ってきたところでは、パネルによる差異はあるものの、代表値として強度の平均を利用することで、問題はないと判断をしていた。しかし、今回の実験において、パネルのタイプによっては、標準値から大きく異なる値が得られ、また、実験上の心理的な影響もあることがわかったため、その意味で、やや遅れた結果となった。しかし、今年度の実験と検討、解析で得られた内容は非常に興味深い結果であり、この研究を進める上で、重要な示唆を与えるものである。したがって、この遅れについては、否定的に考えず、他に解決すべきいろいろな問題点が明らかになったことを肯定的に評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の研究期間は、あと1年間となった。したがって、この研究の当初の目的である、動的換気量制御による省エネルギー手法の開発を進める必要がある。この検討は、現段階で明らかになっている知見とこの研究で開発した動的嗅覚モデルを用いれば、実用的には十分可能であると考えられる。換気量の制御対象としては、学校の教室と病室、便所を想定している。制御対象の臭気としては、教室は体臭、病室はおむつ替えの臭気、便所は大便臭を対象とする。各室の濃度の非定常計算式と、本研究で開発した応答係数を用いた嗅覚順応モデルとを使って、在室者が感じるに臭気を換気量の変化でコントロールし、その省エネルギー性を評価する。その結果に基づいて、各室に最適な換気量制御方法を提案することを今年度の目標とする。
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