研究課題/領域番号 |
24656340
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
河井 康人 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (70121796)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 遮音壁 / エッジ効果抑制 / 流れ抵抗 / 粒子速度 / グラデーション |
研究概要 |
境界積分方程式を用いた理論解析により、エッジ効果抑制型遮音壁の遮音性能は、遮音壁先端に設置しエッジ効果によって生じる大きな粒子速度を抑制する薄い吸音層の流れ抵抗、面密度といった物理特性並びにそれらの分布に依存することを示した。 吸音材の面密度と流れ抵抗の2つの物理特性と遮音性能の関係について、種々の条件において数値解析により検討した結果、一般的な音源、受音位置において遮音性能が最大となる値を概ね把握することができ、また、流れ抵抗等の分布は上部では次第に減少するグラデーション特性を持たせることが重要であることがわかった。このような数値的な予測による知見をベースに、ロックウール吸音材を楔状に成形して物理特性にグラデーションを持たせ1/3縮尺模型実験を行った結果、理論値と良く一致することが確かめられた。併せて、カーテン地等の布を階段状に多層にした実験も行い、理論値と良い一致がみられたが、フッ素加工をしたガラス繊維の布を用いた場合には、理論値との乖離があり、流れ抵抗と面密度のみでは精度良く予測できない多孔材料が存在することがわかった。その原因については不明で今後の検討課題である。また、一般に用いられている統一型と呼ばれる道路遮音壁は片面が吸音処理されており、これらの吸音面がエッジ効果生成に影響を与えることが考えられることから、模型実験により検討を行ったが、遮音性能にはほとんど影響が無いことが確かめられた。実用化にあたっては先端に設置する薄い吸音材は耐候性のある素材が要求され、有望視される種々の材料について性能評価実験を行ったが、今後更なる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画は、1)布の面密度、流れ抵抗、布幅(高さ方向)と遮音性能の関係(数値解析)2)布の厚みが高域の遮音性能に与える影響(数値解析及び実験) 3)遮音壁本体の吸音処理がエッジ効果に与える影響(数値解析及び実験)4)耐候性のある吸音材の検討(金属繊維、セラミック、プラスチックなど)5)1/2もしくは1/3縮尺程度の模型実験による理論予測精度の検証 であったが、1),3),5) に関しては概ね達成できた。2),4) については、検討すべき課題が部分的に残っているが、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
エッジ効果を薄い吸音材等で抑制して、回折音場のレベルを大きく低減させようとする本アイデアについて、一般的な吸音材を用いた模型実験では理論値と良く一致することを確かめた。また、複数の企業がエッジ効果抑制型遮音壁に対して興味を示して頂き、昨年度それらの企業で製品化に向けた実大実験についても数多く行って頂いた。その結果、従来の先端改良型遮音壁を凌ぐ性能が得られ、一部では製品化もなされている。それ故、本年度の研究計画としては、更なる性能向上に向けた値論的検討、実用化に適した吸音材の検討、及び、薄い吸音材を保護するケーシングが遮音性能に与える影響等の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
前項に記載のように、更なる性能向上に向けた値論的検討において数値解析の委託費、実用化に適した吸音材の検討において実験用の材料費、実験補助のアルバイト代、及び測定とデータ解析の委託費、また、薄い吸音材を保護するケーシングが遮音性能に与える影響の検討において実験用の材料費、実験補助のアルバイト代、及び測定とデータ解析の委託費として使用する。
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