研究課題/領域番号 |
24656340
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
河井 康人 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (70121796)
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キーワード | 遮音壁 / エッジ効果 / 回折音 / 境界積分方程式 |
研究概要 |
境界積分方程式を用いた理論解析により、エッジ効果抑制型遮音壁の遮音性能は、遮音壁先端に設置しエッジ効果によって生じる大きな粒子速度を抑制する薄い吸音層の流れ抵抗、面密度といった物理特性並びにそれらの分布に依存することを示し、また、吸音材の面密度と流れ抵抗の2つの物理特性と遮音性能の関係について、種々の条件において数値解析により検討した結果、一般的な音源受音位置関係において遮音性能が最大になる値を概ね把握することができ、また、流れ抵抗等の分布は上部では次第に減少するグラデーション特性をもつことが重要であることを初年度に示した。 平成25年度は、道路遮音壁では必須であるパンチングメタル等による吸音層の保護ケースが遮音性能に与える影響について、理論的、実験的検討を行った。その結果、このような保護ケースは特に高域において無視できない影響(遮音性能の低下)を与えることがわかり、今後さらなる検討を要する課題である。一方、通常の半無限障壁に対してエッジ効果抑制型遮音壁が回折領域における遮音性能の向上が予測できるチャートを理論解析から導いた。これらは、本遮音壁を実際に導入するに当たっての目安になるものである。 本研究内容に興味を持たれた複数の企業が、研究代表者の指導のもとで製品開発に取り組まれ、数多くの種類の吸音材料の中から最適な物理特性に出来るだけ近くかつ耐候性に優れる材料の選定を精力的に行なわれた結果、製品化にこぎつけた。なお、これらのエッジ効果抑制型遮音壁の開発に関して、TBS系列のドキュメンタリー番組である「夢の扉+」でも取り上げられ、2014年3月16日18:30~19:00に放映された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
遮音壁の先端付近に生じるエッジ効果を抑制することによって、遮音壁の遮音性能が向上することを境界積分方程式を用いた理論解析により示し、また、エッジ効果を抑制するための薄い多孔質吸音層の物理的特性について検討を加え、それらの特性を適切にコントロールすれば、遮音性能が劇的に向上することを数値解析から示した。この理論予測の結果、数社の企業が先端設置パネルの実用化に向けて活発に取り組み、研究代表者の指導の下、数多くの実験を行うことによって、適切な物理特性を持つ吸音材料の検討を行った。実用化に向けて、本研究で予定していた多くの項目がそれらの企業による研究開発の中で実施され、製品開発に繋がっていることから、性能的には改善の余地は種々残されているものの、実用化という当初の目標は一応達成された。
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今後の研究の推進方策 |
遮音壁の先端部分に設置するパネルに用いる薄い吸音層の最適な物理特性及び形状の理論的検討を行い、エッジ効果抑制型遮音壁の性能向上を試みるとともに、回折角が浅い場合に遮音性能の低下を改善するための方策についても理論的に検討する。また、最適な物理特性に近い吸音材料を選定し、実物大による試験もしくは模型実験を併用しながら、理論値の妥当性及び有効性を検証するとともに、吸音層を保護するケーシングの影響の最小化についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、道路騒音や鉄道騒音の遮音壁の開発という公共性の高い研究であるが、本研究の基本的アイデアに対し多くの企業が興味を持たれ、研究代表者による指導の下で開発に取り組まれた結果、実用化に向けて本研究で実施を予定していた項目のいくつかの部分が、それらの企業による研究開発の中で実施されたため、研究計画に変更が生じて研究費の未使用が発生した。 エッジ効果抑制型遮音壁の騒音低減効果の更なる性能向上を図り、また、実用化に向けた種々の制約条件に起因する性能低下を克服するために、エッジ部分に設置する薄い吸音層の最適な形状や物理特性検討のための大規模数値解析の委託費並びに模型実験等による検証のための実験材料費に使用する。
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