境界積分方程式を用いた理論解析により、エッジ効果抑制型遮音壁の遮音性能は、遮音壁先端に設置しエッジ効果によって生じる大きな粒子速度を抑制する薄い吸音層の流れ抵抗、面密度といった物理特性並びにそれらの分布に依存することを示し、また、吸音材のこれらの物理特性と遮音性能の関係について、種々の条件において数値解析により検討した結果、一般的な音源受音位置関係において遮音性能が最大となる値を概ね把握することができ、また、流れ抵抗等の分布は上部では次第に減少するグラデーションを持つことが重要であることを初年度に示した。 平成25年度は、道路遮音壁では必須であるパンチングメタル等による吸音層の保護ケースが遮音性能に与える影響について、理論的、実験的検討を行った。その結果、保護ケースは特に高域において無視できない影響(遮音性能の低下)を与えることがわかり、今後更なる検討を要する課題である。一方、通常の半無限障壁に対してエッジ効果抑制型遮音壁が回折領域における遮音性能向上を予測するための多くの計算をおこなった。なお、本研究内容に興味を持たれた複数の企業が、研究代表者の指導の下で製品開発に取り組まれ、数多くの種類の吸音材料の中から最適な物理特性に近くかつ耐候性に優れる材料の選定を精力的に行われて製品化にこぎつけた。なお、これらのエッジ効果抑制型遮音壁の開発に関して、TBS系列のドキュメンタリー番組「夢の扉+」で取り上げられ、2014年3月16日に放映された。 平成26年度には、数値予測計算の精度の検討を行うとともに、吸音材の望ましい物理特性の範囲の検討を行い、吸音材の選定のために有用な結果を得た。また、遮音壁の総高さを抑えることと遮音効果が得られる領域の拡大を目的として、上部を傾斜させる等の場合の遮音効果について理論的な検討を行い、有用な成果を得ることができた。
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