研究課題/領域番号 |
24656346
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神吉 紀世子 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70243061)
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研究分担者 |
小浦 久子 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30243174)
工藤 和美 明石工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40311055)
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キーワード | スプロール市街地 / 市街地再生 / 動的オーセンティシティ / 景観 / 環境設計 / バンコク |
研究概要 |
本研究は、無秩序で問題の多い市街地とみなされることが一般的であるスプロール市街地に対して、形成後数十年を経過するなかで身近な市街地環境と認知されている側面もあることから、そこに潜在する魅力化の可能性に着目した環境設計手法を案出することを目的としている。 平成25年度は、前年度に既に進めていた神戸市長田区北部山麓地のスプロール市街地と、タイ・バンコク大都市圏の郊外スプロール市街地の調査と分析の進捗につとめ、同時に京都市内伏見区の事例地についても現地調査を行った。 バンコク大都市圏の事例については、ノンタブリ県の、複雑な水路網と道路網に沿ってGated Communityと旧集落地区や以前に開発された住宅地区の混在立地する地域を対象として、異なるタイプの地区の住民、住宅開発事業者、行政へのアンケート・ヒアリング調査とその分析を進め、その結果は平成25年度中の論文や国際会議でも発表し議論を深めるようにつとめた。これにより、Gated Communityの内外の環境評価やコミュニティの交流の実際について分析した。これら調査の結果にもとづき統合的な環境形成にむけ、Gated Communityの扱い方の検討・コミュニティ分離を防ぐ意味をもつ地域資源の顕在化の観点等が得られ、環境設計の方針の候補を得ている。 神戸市長田区の事例については、スプロール市街地の個々の敷地のもつ条件の差が大きいことがわかったことから、改めて制度的および実質的接道条件の現況、空き地・空き家分布、空き地の環境管理現況、空き地・空き家化の要因分析、新規開発の実績と分布解析、等の作業を一体的に進め、その結果から敷地ごとの環境設計の方針につなげる手法の案を作成した。これに関しては神戸市長田区役所等の協力を得て議論の深化につとめ、地域診断の方法としての有用性に一定の評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バンコク大都市圏・ノンタブリ県の事例については、現地での調査、資料収集等は平成25年度中に進捗があり、分析考察を進め、それらの一部は論文発表等も行うことができた。環境設計の考察については依然実施中であるが、当初予定よりは早く進めることができているとみなすことができる。また、神戸市についても区役所等の協力が得られ新規開発のデータ提供等を得ることができ、予想よりも早めに進められているとみなしている。この2事例に集中したこともあり、京都市の事例はまだ進捗があまり得られていない。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は最終年度であるので、平成24年度と25年度の成果を総合化し分析を再精査しつつ、スプロール市街地の魅力化の可能性に関する提言と環境設計手法としての一般化作業に注力することとする。ビジュアル資料の解読による変化経過の把握、現地踏査計測による変化の経過痕跡の抽出と時代ごとの空間性分析、関係者の口述等による経過痕跡と空間性の同定・評価、等の方法を用いる調査から得られる結果から環境設計方針へ応用する可能性を多様に示すことができるような成果のとりまとめをめざす。スプロール市街地に関する研究集会等を通じて議論の精度を高め、実効性ある提案となるようにブラッシュアップし、国内外の実務者・研究者との意見交換、とりわけ、スプロール市街地における魅力化の方法、「動的オーセンティシティ」の捉え方、にかかわる議論が継続展開されていくよう発表媒体に工夫をする予定である。
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