本研究は,高齢者福祉,がん医療,障害者福祉の分野において,制度に依存せず独自の支援活動を行っている施設を非制度依存型地域ケア施設と捉え,同施設の実践状況を長期間に亘り継続的に把握し,在宅での生活を基盤とするこれからの地域生活支援システムとそのケア施設の環境のあり方を明らかにすることを目的としている.本年度は,非制度依存型地域ケア施設と定義した以下の施設を対象として,施設運営・施設利用実態調査を実施した. 1)高齢者福祉の分野では,宅老所をモデルとして制度化された小規模多機能型居宅介護施設について,制度に含まれなかった居住機能を併設する施設について,実態把握を行った. 2)小児専門病院に近接して設置される患者・家族滞在施設の中で,きょうだい児保育を実施する施設の運営状況や施設環境を把握するため,3施設を対象とした訪問ヒアリング調査を実施し,その傾向を分析した.また,最もきょうだい児保育の利用件数の多い施設を対象とした利用実態調査を実施し,同施設の計画要件に関する検討を行った. 3)医療依存の高い重症障害児者の療育環境については,医療施設の重度重複障害児病棟,多機能型(居宅介護,日中維持支援,短期入所,等)施設への訪問ヒアリング調査を実施した.また,同施設において施設空間利用実態調査を実施し,医療依存の高い重症障害児者のための施設計画要件について検討した. これまでの研究成果を審査付き論文としてまとめ日本建築学会に投稿した.がん医療における相談支援施設に関する2編が掲載された.宅老所の施設運営・利用実態に関する経年分析に関する論文1編が掲載された.
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