高齢者が心身共に地域で、できるだけ長く自立して生活することは社会参加の可能性を高める点で重要である。本研究では、高齢者の自立と関係が深いと考えられる歩行について、歩道における歩行面の硬さに着目し、簡易型脳波計を使用して、健常な成人男女で硬さが異なる歩行面(厚いスポンジ面、薄いスポンジ面、発泡スチロール面、塩化ビニール床面)を歩行するときにおける、脳波α波とβ波の発現状況から脳活動の変化を年代別にみて、脳が活性化する歩道を検討した。実験は、健常な30歳代から60歳代の男女36名(女16名、男20名、平均年齢48.78±12.5歳)を対象者として、立位での静止状態の時と硬さの異なる4種類の歩行面を5分間歩行した時に、感覚情報を統合する領域である前頭前野において脳波を導出した。脳波は、身体活動中でも携帯により測定可能な簡易型脳波計を用いて、α波とβ波を測定した。導出された脳波は、3秒毎に数値化積分値化され定量化(積分値(N)/3s)され表示される。この数値を発現数とした。また5分間における発現数の標準偏差値(N/5minSD)を発現数の増減幅値とした。さらにまた、立位課題におけるα波とβ波の発現数平均値を基準にした、他の4つの特定の課題時における変化率を求めた。 その結果、厚いスポンジの歩行面が、脳活動において影響があり、60歳代以上ではその影響が最も多いことが分かった。以上のことから、柔らかい歩行面は高齢者の脳を活性化すると考えられ、歩道、散歩道の歩行面の硬さを変えることで、より心身共に自立した高齢期を送れる可能性があると考えられる。
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