第一に、目視によって確認されてきた山当てを、GISとGPSを用いて精密に計測する方法を構築した。昨年度に実施した山形県鶴岡市での試行を展開し、今年度はさらに、GPSによる計測の精度の検証、GISの幾何補正機能を活用した都市形成期の道路の復元方法、見かけの山頂の座標の特定方法、等を検討し、より精緻な方法を構築した。 第二に、この方法を用いて、城下町都市における山当ての実態分析とその意図を解析した。まず、全国37都市における315の山当てラインの実態分析を行った。次に、事例都市における詳細分析から、村上では、大枠の骨格を構成する対象道路は山頂に対して明確な軸線を持つ、山頂に対して大きなズレを持つ山当てでは山の見え隠れがある、盛岡では、寺院・磐座・周囲の山が街路骨格・外堀の形態・城門の配置等の基点となっている、熊本では、山頂に対して明確な軸線を持つ山当ては城下町の初期段階に形成されている、半数以上が信仰の対象となる山への軸線を持つ、鹿児島県の3つの近世外城麓集落では、見通しの目標物の切り替わり等の手法が用いられている、等を明らかにした。 第三に、同様に殖民都市での調査分析を行った。まず、29都市で49の山当てラインを発見し、主にGPSを用いた実測調査からその実態を検証した。次に、北海道の開拓経緯に起因するグリッド市街地の特徴を把握し、山当てが見られる対象道路の性格を分析する方法を構築いた。これに基づいて後志地方の6町村における12の山当てラインの意図を解析した。その結果、農耕グリッドの基準線として2つの山への直行軸として計画されたこと、農耕グリッドに規定されない市街地において市街地グリッドの基準線として計画されたこと、等を明らかにした。 以上、目視で確認されてきた山当ての実態を客観データを用いて解析し、これらが意図した計画や手法であったことを推測できる根拠を蓄積することができた。
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