研究課題/領域番号 |
24656361
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小岩 正樹 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (20434285)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 日本建築史 / 建築生産 / 正倉院文書 / 造石山寺所関係文書 / 石山寺 |
研究概要 |
本研究課題は、『正倉院文書』のなかの「造石山寺所関係文書」を対象とし、奈良時代の寺院の建造工程(計画、施工、労働状況など)の解明と、竣工した建築物の復元を試みるものである。これまでも「造石山寺所関係文書」の史料分析は進めてきており、また建築の部分的な復元も行ったが、改めて全体の造営状況を復元することを目的としている。具体的な目標は、建築部材の情報を可能な限り正確に把握することを基本とし、その検証作業を踏まえ、部材供給という造営過程の復元を行うことと、建築部材の種類(柱や長押など)や寸法・数量を考慮し、石山寺本堂を中心とする建築物の形態を復元することである。研究の段階として、1:史料・帳簿の整理、2:工程や竣工像を踏まえた検証とに分けられ、本年度は前者について実施した。 ・史料は石山寺の現場と山作所との間の建材に関する通信記録が中心であり、その整理を行った。作製指示記録(日毎)、収納記録(日毎)、作製および運搬・収納記録(月毎)、 作製および運搬・収納記録(季節毎)であるため、 同時に造営過程が窺える。これらは、時期が後の史料は前のものを転記し、したがって内容は包含関係にあるはずであるが、整理を行った結果、史料間においては部材情報は必ずしも一致していないことが指摘できる。 ・石山寺では複数の建築が並行して造営されていたため、ある種類の部材であっても、使用する建築が異なる場合は、寸法値などが異なる。したがって、寸法値や作製員数をもとに、上記の史料ごとに表された記録を列挙し、部材種類ごとの記録シートを作成しつつ、 比定作業を行った。対象とした部材は、柱、棉梠、角木、博風、架、長押、桁、佐須、扉関係部材(扉板、鉾立、敷見、鼠走、目草等)、簀子、歩板である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、史料の読解・整理とそれに伴う建材の供給過程の整理が目的であったが、上記の通り部材ごとにシートの形態にまでまとめることができたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度にまとめた、帳簿史料上での記録のシートに対し、模型制作および遺跡・遺物や施工技術などの実務上の観点から改めて検証を行い、復元を完了させる。すなわち、本年度が机上の分析であったことに対し、次年度は、地理関係、工程スケジュール関係、労働状況、竣工建築の妥当性などの各視点から検証を行い、建造過程の精度を高めることを目標としている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、中心となった史料確認に関して、排印本や影印本の入手・閲覧がスムーズに進展し、出張調査などを実施する必要がなかった。次年度には現地確認調査や資料収集調査(史料館)を計画しているが、これに合算し、情報収集や検証に充てるものとする。
|